ご挨拶 Greetings

2017.3.2会報No.70

ICT海外ボランティア会を未来に繋げよう

 

                                                        当会特別顧問 元駐ケニア大使 宮村 智

 

此の度、ICT海外ボランティア会が再開されることとなった。当会の前身であるNTT OB SV会が創設された2008年から特別顧問を仰せつかっている私にとっても誠に嬉しいニュースである。再開のために尽力された山川新事務局長を始めとする皆様の決断と努力に敬意を表し、祝意を送りたい。そして、今後における当会の継続と更なる発展を心から期待し祈念しつつ、この拙文を奉げたい。

 

再開後における最初の会報なので、なぜ私が当会の特別顧問を務めているかを自己紹介を兼ねてご説明したい。私は大学卒業後直ちに大蔵省(現在の財務省)に入省し、30年余り勤務した後、2000年に退官した。退官後、NTT持株会社の財務担当の取締役及び常務取締役として4年間、NTTに勤務する機会を与えられた。NTT常務を辞任後、再び政府に呼び戻されて駐ケニア特命全権大使に任命され、2004年から3年間、兼轄したエリトリア・セーシエル・ルワンダ・ブルンジを含めたアフリカ5か国の大使を務めた。大使を終えて、損保会社に勤務していたところ、2008年春に石井前顧問・加藤前事務局長が訪ねて来られ、NTT OB SV会を創設するので、特別顧問に就任してほしいとの要請を受けた。私はICTの専門家ではないので躊躇を感じるところもあったが、アフリカ駐在の経験を踏まえると世の中のためになる有意義な会と思われたことに加えて、NTTでお世話になったというご縁もあるのでお引き受けしたわけである。

 

会の発足後、特別顧問としてやったことは、加藤事務局長の要請に応じて、時折、会報の巻頭言に拙文を寄稿し、海外情報談話会に出席するくらいであったが、会報を通じて、当会の活動や発展をフォローすることは楽しみであった。そして、NTTの現職やNTT関係以外の方々の入会に伴って会員数が増加して活動範囲が拡がり、会の名称もICT海外ボランティア会と改称されたこと、トンガ・プロジェクトが成功裡に完了したこと、当会の活動が高く評価されて電友会から表彰され、JICA理事長からも感謝状が授与されたこと、これまでの海外技術協力活動を取り纏めた冊子が発行されたこと、などを知るたびに、我がことのように喜んでいた。

 

ところが、昨年11月末に突然「ICT海外ボランティア会クローズのご挨拶」を受け取り、大変に驚くとともに、とても残念で寂しい思いがした。しかし、私がやれることは何もなく、加藤事務局長を始めとする幹部の皆様の長年に亘る尽力に対してご苦労様を申し上げるしかなかった。そうしたところ、新年に入ってから、当会を再開することになったとの連絡を頂戴し、冒頭に述べたように心からの喜びを感じた次第である。

 

私はICT海外ボランティア会の再開には大きく分けて3つの意義があると思う。

 

1は情報通信技術(ICT)の普及による途上国の経済発展への貢献である。パソコンやインターネットが一般に使われ始めた1990年代以降、一国の経済の発展はICTを使いこなしているか否かによって大きく左右されるようになった。デジタル・ディバイドと言われるように、ICTの普及如何で経済成長率や貧富の格差が生じる時代となったのである。例えば、私が大使を務めた国の中で、ルワンダは知識集約型経済の実現を目指してICTの普及に力を入れているが、その甲斐もあって過去15年間の平均で毎年8%GDP成長率を達成している。こうした成功例を見ると、ICT海外ボランティアが途上国の経済発展に貢献する余地は少なくないと思われる。なお、ICT分野を含めた日本の海外ボランティアは途上国の組織や地域社会に入り込んで活動することを基本としているので、途上国の人々から親しまれ、大いに感謝・評価されており、日本のイメージ向上や途上国と日本との友好関係の促進にも多大な貢献をしている。

 

2ICT専門家に対する退職後の生きがいの提供である。現在の退職年齢は6065歳かと思うが、大半の方々は退職年齢に達しても元気で、気力・体力とも充実している。SV(シニア・ボランティア)はそうした方々に退職後の一時期を生きがい感じながら過ごしてもらう有意義な選択肢を提供する。私が大使時代にお会いしたSVの方々は全て、途上国の国造りや人材育成に貢献しているという生きがいを感じながら、充実したSV生活を送られていた。

 

3は当会の役割を未来に繋いで行くことである。人間は歴史や経験から学ぶ動物であり、人の営みは過去から現在、そして未来へと繋いでいくことによって、充実し発展していくものが多い。このことは文化、学問、研究、ビジネスなどいろいろな営みに当てはまる。当会の活動も長く繋いでいけば、海外ボランティア活動の成果が着実に積み上げられ、さらに充実し発展していく可能性も高まることになろう。現に、再開後には、これまでの活動に加え、国内外企業等との交流と企業の海外進出への支援という新たな目的も付け加えられると聞いており、ここから何が生まれてくるか楽しみである。

 

以上のように、ICT海外ボランティア会を再開する意義は大きく、今後に対する私の期待も大きいものがある。他方で、当会は何ら財政的な基盤がなく、全ての活動がボランティアで実施されているので、あまり無理をしたり、急いだりすると続かなくなるかもしれないという懸念が無いわけではない。再開前の活動だけでも高い評価を得ていた当会であり、ボトムラインはとにかく当会の活動を着実に継続して、未来に繋いでいくことである。再開を機に、未来へ繋いで行くことの価値や重要性を再確認しつつ、一歩一歩、着実に活動を展開していってもらいたいと思う次第である。(了)


ご祝辞 Congratulations

2017.8.4会報No.75

 ICT海外ボランティア会の皆様へ

 

独立行政法人国際協力機構(JICA)  

青年海外協力隊事務局長 山本 美香

 

 日頃よりJICAボランティア事業へのご支援、ご協力を賜り厚く御礼申し上げます。本年(2017年)4月より青年海外協力隊事務局長を務めております山本美香です。どうぞ、よろしくお願い致します。

 

JICAボランティア事業は1965年の青年海外協力派遣を始まりに、今年52年目を迎え、累計派遣人数は5万人を超えました。発足当初より「国民参加協力事業」として、多くの国民の参加とご支援により、初代隊員26名の派遣から、ひとり一人が繋いだ志と「持続する情熱」は連綿と受け継がれ、大きく育っております。半世紀に亘るこの持続する情熱は、顔の見える国際貢献として、また参加したボランティアのグローバル人材としての国内外での活躍に対し、高い評価と期待が寄せられています。

 

昨年はアジアのノーベル賞と言われる「ラモン・マグサイサイ賞」を青年海外協力隊が日本の団体として初めて受賞しました。これは、参加したボランティアひとり一人の「住民と一体となった協力活動」が高く評価された結果であり、本事業を応援してくださった多くの方々のご支援なくしては果たせなかったことです。

 

他方、国内・海外の状況が急激に変化する中、これからのJICAボランティア事業にはより大きな変革が必要となっていると感じます。今年度、協力隊事務局では“JOCVルネッサンスを合言葉に、「今の時代、さらに将来に続くJICAボランティアの新たな価値を創造しよう!」「JICAボランティアの可能性をもっと発掘しよう!」ということで動き始めました。協力隊事業が変わらずに持ち続ける、途上国の人々と共に、途上国の人作りに貢献しようとする「持続する情熱」を大切にしながら、時代に即して変わるべきことは変えていく柔軟性を持ち続けることが大切と考えています。

 

協力隊事務局では、連携型派遣(民間・大学・自治体等と連携したボランティア派遣)の一層の拡充、参加しやすい制度の構築、を積極的に進めております。これらの取り組みにより、多様な人材がJICAボランティア事業に参加し、質の高い活動が行われるようになることを目指しています。

 

「民間連携ボランティア」は2012年に開始された制度ですが、派遣されたボランティアの方々の活動は高く評価されており、帰国後のヒアリング調査において、参加した社員の様々な能力育成の機会になったとの評価も頂いております。一方でまだまだ企業の方々に認知されておらず参加者も限定的です。広報活動にも力を入れておりますが、参加する企業にとって参加し易い、途上国に対しても民間連携ボランティアの良さが示せるような派遣方法の改善に取り組んでいるところです。

 

ICT海外ボランティア会の皆様は、JICAボランティアに参加された経験を活かして様々な活動を行っておられると伺っております。JICAボランティア事業の3つの目的(開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与、異文化社会における相互理解の深化と共生、ボランティア経験の社会還元)にもあるように、帰国後の社会還元活動はまさに本事業の重要な取り組みでもあります。貴会の益々のご発展を心より祈念しております。

 

協力隊事務局としても、国民参加の事業として市民に伝える努力を怠らず、変化の時こそ成長の機会と捉え、時代に即した変化を恐れず、変わらずに引き継ぐべきものを大切にしながら、事業の発展に青年海外協力隊事務局一丸となって取り組んで参る所存です。皆さま方のご指導、ご支援を心からお願い申し上げます。