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2024.2.24会報No.112 NEW!

第22回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第22回ICT海外情報ウェブサロンが2024年2月22日(木)15時~17時、ウェブ会議室において開催された。当初は、コロナ禍で急遽中止していた「リアル会場+ウェブ会議室」を4年ぶりに復活予定だったが、会場参加者が少ないため、ウェブ会議室のみの開催に変更した。世の中がウェブ会議に慣れてしまったようで、喜ばしいことかもしれないが、何か残念な思いも残った。講師は急遽中止した際にお願いしていた西口美津子先生(千葉工業大学非常勤講師、全国通訳案内士)に再度お願いしたところ快諾を得、また演題は最新話題の「定年後のキャリア形成に生成AIは役立つか?~通訳ガイドを例に~」であった。定年後のキャリアを充実させる一つの方策として、ChatGPTのような生成AIの活用について通訳ガイドを例に考察したものであり、活発な議論で時間を忘れて、楽しく有意義なウェブサロンとなった。講師を引き受けていただいた西口先生には深く感謝の意を表します。

 主な話題を以下に示す。

・第1次AIブームは学生としてプログラミングを学んだ。第2次ブームでは日立製作所での電子交換機ソフトウェア開発や米DEC社日本法人で社内用ソフト開発、MicroPro社と(株)十印でのマニュアル等の日本語化・英語化などに携わり、SRI(スタンフォード研究所)東アジア本部やNortel社に勤務した。AIやExpert Systemの存在を知ったのもこの頃であった。第3次ブームでは、(独)雇用・能力開発機構に勤務、2006年に全国通訳案内士(英語)免許を取得した。高専(福島、沼津)時代の英語授業にAKA社のMUSIO(AI Robot)を導入した。観光庁の研修でNICTのVoiceTraを知り、千葉工業大学の英語授業で使用した。現在は第4次AIブームが到来しているとも思われ、ChatGPTについて同大学の授業でも紹介している。

・定年後は人生で思い残したことをやる時期かもしれないと思っている。文学への思いが強く、伊豆文学賞、シナリオセンター、歌会始などへの応募をしているが、厳しい競争で未だ世に出ていない。しかし、これからも挑戦したいと考えている。一方、スキーは競争がなく、好きで続けている。

・通訳ガイドは2006年に免許取得したが、2022年まではペーパーガイドであった。その後、団体をバスで2日間案内したり、個人案内などしてきたが、適度な緊張でストレスなく継続できれば理想である。

・通訳ガイドには全国通訳案内士、地域通訳案内士、資格なし者がいる。全国通訳案内士は国家試験合格後、都道府県で登録し、登録した都道府県で報酬を得て通訳案内している。

・日本には日本固有の技芸があり、放っておけばなくなってしまう恐れがあるものがある。西洋人などが知らないものや、基本は中国から学んだものでも、中国風ではなく、日本固有のスタイルになっているものがある(福澤諭吉著「帝室論」)。

・全国通訳案内士は合格率が5~26%と低く、活躍できる人は非常に少ない。また、通訳案内業務の受注方法は多数あるが、エージェント経由が一般的である。

・生成AIとは「さまざまなコンテンツを生成できるAIのこと。従来のAIは決められた行為の自動化が目的であるのに対し、生成AIはデータのパターンや関係を学習し、新しいコンテンツを生成することを目的としている」(野村総研ほか多数)。最近のニュースとして、ハリウッドのスト、JTBの導入、芥川賞でのChatGPT部分5%などの話題がある。

・ハロー通訳アカデミーでは、全国通訳案内士等はChatGPTを十分使い、ソクラテス式問答法による質問をするよう指導している。①明確化、②初期設定、③仮定、④エビデンス、⑤ソース・期限、⑥影響・結果、⑦視点、についてChatGPTに質問するものだ。

・2人のベテラン通訳案内士のマトリックス履歴書を作成してみた。2人とも着実な履歴を歩み、高齢(一人は94歳)であっても未だ現役である。

・通訳案内士はスキルと熱意・魅力で分類すると、スーパーガイド、人気ガイド、ベテランガイド、補欠ガイドの4つのタイプに分類できる。補欠ガイドはスキルを高め、魅力を磨く必要がある。

・ChatGPTに、「ガイドとして浅草を案内するのに気をつけること」「日本の大仏ベスト10」「鎌倉の小町通りの食事場所」などを質問してみた。日本語と英語での回答を得ることができ、通訳ガイドとしてChatGPTは有益なものである。

・生成AIの通訳ガイドへの活用の可能性と課題として、①外国人観光客を想定した「壁打ち」効果が期待できる、②主要な観光地について一般的なガイディング情報を日英2カ国語で得られる、③最新情報へのアクセスによりベテランガイドの引退時期を遅らせられる、④補欠ガイドが予習できる、ことが上げられる。これらのほか、今後も様々な活用法が提案されることが期待できる。

・現在の日本人は、日本の最も繁栄した時代を生きてきたが、これは数千年の歴史の中でたった一度だけ世界で認知、評価されたものであり、世界の人々の日本に対する認識とはズレが大きくなってきている(前崎信也著「アートがわかると世の中が見えてくる」)。

 

質問・意見は非常に活発で絶え間なく続いた。以下、質問の一部を抜粋するが、回答は参加者の特権として省略する。

・全国通訳案内士の試験は難関と聞いているが、どのように対応すれば良いか。

・高専の英語力はどうだったか。

・ベテランガイドに向けて、どのジャンルを目指すか。

・JICAなどがKOSENブランドを海外展開しているが、その関係の仕事はないか。

・通訳ガイドをしていて感動したことはあるか。

・顧客である外国人の国・歴史などを事前に理解してガイドしているか。

・外国人観光客は日本文化のどのような点に感動しているか。

・生成AIは業界別に、例えば観光業界専用で発展することはできるか。

・ガイドを3ヶ月したら止められない職業であると聞いたことがあるが如何か。

・文学を今後も取り組むとのことだが、動機は何か。

・イタリアで日本語のガイドブックを見ながらガイドの話を聞いていたら叱られたが、外国では一般的か。

 

このように、真にウェブサロンの雰囲気であり、今後とも皆様のご参加をお願いいたします。

最後に、本間様から、2月15日に逝去された加納貞彦先生への追悼の言葉があった。加納先生は当会イベントにも多数回ご出席されたことがあり、今回の参加者からもそれぞれの想い出などが紹介された。全員で黙祷を捧げ、ご冥福を祈った。合掌。

 


2023.11.27会報No.111

第21回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第21回ICT海外情報ウェブサロンが2023年11月25日(土)19時~21時、ウェブ会議室において開催された。講師は志村直茂様(BHNテレコム支援協議会・参与、元日本電気システム建設)、演題は「災害時に活躍するバックパックラジオ」であった。世界各地で起きる災害発生時に、あらゆる情報通信手段が使用できない時でも、情報発信ができる安価で持ち運びができる放送局「バックパックラジオ」の話であり、活発な議論で時間を忘れて楽しく有意義なウェブサロンとなった。講師を引き受けていただいた志村様には深く感謝の意を表します。

 主な話題を以下に示す。

・特定非営利活動法人(認定NPO法人)BHNテレコム支援協議会(以下、BHN)は、情報通信もBasic Human Needs(生活基盤を構成する要素=衣・食・住)であるとの信念のもと、1992年9月に設立された。

・最初の支援活動は1992年~1994年、チョルノービリ原発事故で被災された方々を支援するため、オブニンスクとモスクワ間、約120kmのマイクロ波ネットワーク回線の構築、病院への医療情報システム及びテレビ会議システムの導入などであった。

・BHNの主な活動は、①生活向上のための支援活動(社会開発)、②緊急時の人道支援活動(緊急人道支援)、③人を育てる支援活動(人材育成)である。

・生活向上のための支援活動(社会開発)として、ミャンマーのカレン州・モン州における紛争被害者を対象とした住居電化及びコンピュータ教育設備を構築し、現在も継続中である。緊急時の人道支援活動(緊急人道支援)としては、熊本地震、ハイチ地震、スマトラ沖地震への支援などがある。人を育てる支援活動(人材育成)としては、下図右(略)のような支援をしている。ミャンマーの住居電化やハイチの難民キャンプのCAシステムでは街路灯も設置したため、治安が格段に良くなったとの謝意もあった。

・バックパックラジオのアイデアは若手社会人たちのプロボノチームであるMobile Radio Stationによって発案された。同チームは2014年2月に世界銀行が主催した防災・減災ハッカソンRace for Resilienceをきっかけに誕生し、電機メーカーに勤めるエンジニアを中心に構成されている。その後、FMわいわい(阪神・淡路大震災をきっかけに放送開始)やインドネシアコミュニティ放送協会(JRKI:ジャルカイ)とのパートナーシップ、さらにはBHNの技術者が改良を加えることによって途上国での実用化に至っている。

・災害発生時、スマホやテレビは電源問題等のため使用できず、手軽で迅速に対応可能なラジオ放送ができるよう、バックパックラジオが開発された。

・「いったい何が起きたのか」「どこで何が手に入るのか」「いつ復旧するのか、どう立ち直れば良いのか」など、混乱する時期に、正しい情報と心安らぐ音楽、そして日常風景を伝えることは、生き直すための希望を届けることでもある。

・バックパックラジオは、FM送信機(15W)とアンテナ、ソーラーパネル、バッテリーで構成されており、マイクや専用のスマホアプリを使ってラジオ放送を始めることができる。電源が使用できれば、送信機とアンテナだけ運べばよい。設置時間は30分程度で、子どもや女性でも使用可能である。放送範囲は2~3km、機材費は約500ドルであり、送信機以外は一般的に現地調達可能である。

・ラジオ放送の基礎知識からバックパックラジオの組立・放送までを学ぶワークショップをインドネシアで開催した。ムラピ山(活火山)周辺の7つのコミュニティラジオ局スタッフが参加し、災害放送だけでなく、平時に伝統舞踊の中継などにも使用できるのではないかなど、今後の活用について意識合わせが行われた。

・BHNは世界コミュニティ放送連盟に加盟しており、現在、フィジー、トンガ、バヌアツにおける女性主体の情報提供へのバックパックラジオの導入について検討している。

・試験放送では、地域の人達、学校、子どもたちにも参加してもらう。方言なども(災害時には)効果的であり、放送内容についても十分に考慮・検討する必要がある。

 

 質問・意見は非常に活発で絶え間なく続いた。以下、質問の一部を抜粋するが、回答は参加者の特権として省略する。

・日本国内での適用はどうか。町内会で使用したいが可能か。

・日本では防災無線が幅広く導入されているが、それとの関係はどうか。

・ラジオを知らない世代や持っていない家庭が多いが、どのように普及すれば良いか。

・FM放送ではなく、AM放送は考えられないか。

・海外における無線・放送免許等はどうなっているか。

・耐久性はどうか。故障時はどのように対処するか。

・楽しい番組になっているか。

・宗教色の強い番組などを放送することはあるか。

・世界各地の案件発掘はどのようにしているか。

・ウクライナ、ガザなどの復興時に提供できないか。

・災害時等で、BHNの支援をお願いする場合、どうすれば良いか。

・BHNの広報はどうしているか。国境なき医師団のように、一般の人達に知られるようになれないか。

・BHN及びバックパックラジオの資金面はどうなっているか。

 

このように、真にウェブサロンの雰囲気であり、今後とも皆様のご参加をお願いいたします。


2023.9.21会報No.110

第20回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第20回ICT海外情報ウェブサロンが2023年9月16日(土)19時~21時、ウェブ会議室において開催された。講師は川内和子様(Toastmasters International リーダー、エグゼクティブ・コーチ、元日本ノーザン・テレコム広報代表)、演題は国際教育団体「NPO組織が100年続く訳」であった。若手だけでなく、シニアにとっても社会・友人とのつながりや英語力・頭脳を維持できるものとして魅力的な話であり、活発な会話で時間を忘れて楽しいウェブサロンとなった。講師を引き受けていただいた川内様には深く感謝の意を表します。

 主な話題を以下に示す。

・Toastmasters Internationalは1924年10月に南カリフォルニアで創設され、来年は100周年に当たる。世界のNPO法人の平均寿命は約10年、会社は約30年と言われており、Toastmastersは非常に長く続いている組織である。 https://district76.org/ja/

・ミッションは「全ての会員が、優れた有能なコミュニケーターとリーダーになれるよう支援すること」、またコアバリューは「誠実、尊敬、奉仕、卓越性」である。

・世界148カ国で展開し、2023年8月現在でクラブ数14,271、会員数266,554名となっている。当初は男性のみ入会できたが、約50年後に女性も加入できるようになり、現在では女性が55.1%を占めている。英語だけでなく、各国語によるクラブも存在する。日本には全国各地に約200のクラブがあるので、近くのクラブや気に入ったクラブ等に参加し、皆様のご経験などを後輩に教えてほしい。

https://district76.org/ja/list_of_all_clubs/ 

・先生がいない教育機関のようなものであり、論評(評価)、メンタリング、サーバント・リーダーシップに特徴がある。

・メンタリングは成長への極意であり、乙川弘文師とSteve Jobs氏のメンタリングのほか、多数の国際会長がメンタリングの素晴らしさを語っている。

・サーバント・リーダーシップは、①今日よりも明日をより良くするために相互に助け合う、②誰も取り残さない、③すべての会員が、トーストマスターズのイベントや活動で歓迎されながら参加していると感じられるようにするビジネスモデルである。

・クラブ-エリア-ディビジョン-ディストリクト-リージョン(14箇所)-本部という組織になっており、日本はリージョン14に含まれる。

・クラブ活動は司会者、文法係、あー・うー係、計時係などを役割分担し、即興スピーチ、準備スピーチ、個人論評、総合論評、今日の言葉のプログラムで構成している。コミュニケーションを図り、自信をつけて、勇気を持つという3Csのサイクルを回す。

・あー・うー係は、発表時に発する無駄な「あー・うー」などをカウントする係である。即興スピーチは司会者がお題を出して、前触れなく指された方が1分以上2分以内で発表する演習で、実社会でも突然、挨拶やスピーチを求められることがあるのでいい練習になる。

・企業内のクラブも多数ある。NTTは2012年から2015年、新入社員研修の一環として15クラブが活動していたが、現在は役割を終えてすべて廃止している。

・IT関係では、IT Toastmasters Clubというクラブもある。

 https://7539361.toastmastersclubs.org/ 

・パスウェイズというオンライン教材があり、自分のペースで基本学習ができる。

・日本全国大会や国際大会でのスピーチコンテストなどが毎年開催されている。

・100年続く訳として、①活動を通して誰でもが持つ「人前で話す恐怖」を和らげる、②他への尊重の気持ちが強くなる、③活動を続けることで自分を望む方向に導ける、④ビジネスモデルがシンプルで人間関係改善に役立つ、⑤安価な会費(半年60ドル)で長く続けられる、⑦世界中の会員と友好を深める機会に恵まれている、⑧活動が楽しく笑うことでストレスが軽減する、⑨英語を使う機会が多く多文化を学べる、などがある。

 

 多くの参加者から多数の質問・意見・要望があった。以下、それらについて、講師の一部回答を含め、簡単に列記する。

・Toastmastersはあまり知られていない。新興宗教かと思っていたが、魅力的な活動であることを理解した。

・近くにクラブがあるようなので、英語力維持のためにも、すぐに入会したい。

・年齢や学歴等は不問であり、93歳の方も参加している。

・会合は毎月1回や毎週1回などクラブごとに異なり、時間は2時間くらいが多い。

・日本では1954年設立で69年間続いているクラブがある。

・途中で辞めるメンバーもいるが、それは普通のことと捉えている。一度辞めても登録は本部データベースに残っており、再入会には入会費20ドルは不要である。

・米軍基地のクラブでは、生の英語に接することができる。

・英語を聞く機会は多数あるが、話す機会はあまりないので、この活動は有益だ。

・ディベートのクラブもあるようなので、特に若手にはディベートに慣れてほしい。

・米国の大学などでスピーチやプレゼンの授業があり、非常に効果的だった。

・Excellentなリーダーシップができることが求められる。

・同じスタイル・文化・品質が100年間続くのは素晴らしい。

・宗教や政治に関するスピーチはあるか。国民性が現れる国はあるか。

・自由主義陣営だけでなく、ベトナム、ロシアなどでも活動している。

・チャットGPTにより、今後は指示待ち人間ではなく、指示を出す力が求められる。

・パンデミックの影響はあったか。

 

 終了予定は20時30分であったが、21時30分過ぎまで絶え間ない意見交換があり、真にウェブサロンの雰囲気であった。


2023.7.24会報No.109

第19回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第19回ICT海外情報ウェブサロンが2023年7月22日(土)19時~21時、ウェブ会議室において開催された。講師は当会ウェブサロン初の女性講師、南川真海子様(JICA青年海外協力隊事務局主事)、演題は「海外協力隊で得たことや今後の協力隊事業の方向」であった。講師はJICA青年海外協力隊(JOCV)としてナミビアに派遣され、ベトナム、マーシャル諸島で企画調査員、セルビア短期出張などを経験され、現在はJOCV事務局に勤務されている。当会のウェブサロンで最大の参加者があり、活発な会話もあり、時間を忘れて楽しいウェブサロンとなった。講師を引き受けていただいた南川様には深く感謝の意を表します。

 主な話題を以下に示す。

・大学卒業後、(株)アスキーに就職し、2年後にJOCVのPCインストラクターとしてナミビアに派遣された。

・ナミビアは当時、人口約190万人であったが、現在は約253万人に急増している。それでも、人口密度は世界で2番目の低さである(モンゴルが世界一)。

・人口増加に対して学校・教員数が足りない、ジニ係数(貧富の格差)が大きい、HIV罹患率が高い(成人13%)、失業率が高い、などの課題がある。

・ボノフィ中等高等学校に配属された。教員数は約30名、生徒数は約900名(うち700名が寮生)、学級数が23クラス(中2~高3)であった。担当教科はコンピューターだけでなく、数学、体育、美術も実施し、2年目からは担任も受け持った。

・学校で驚いたことは、「先生、宿題を出してください」と生徒から言われたことである。日本の学校ではよく宿題が出るが、その幸せを思った。

・教科書が少なく、教員が黒板に書き、生徒がそれを書くことが多かった。教員のレベルは一般的には低かったが、現在は国が教育のレベルアップに力を入れている。

・8人兄弟などでは、中学校に行く子は一部の優秀な子だけであった。学校を辞めて市場などで働く子も多かった。

・協力隊経験で得た気づきとして、感謝することが幸福につながっていること、大人も子どもも幸せそうに役割分担していること、他人とシェアし許し合う心を持つことが挙げられる。翻って、日本人は幸せなんだろうかという疑問も出てくる。

・ベトナムでの企画調査員(ボランティア事業)は、看護師、作業療法士、助産師などの支援であった。ベトナムの看護師は医者に近い業務を任されることもあり、日本の看護師免許でできない業務もあるため、徐々に5S指導業務などにシフトした。

・ベトナム戦争時の枯葉剤の影響で、障がい者や自閉症児も多かった。

・マーシャル諸島は真珠の首飾りと言われ、風光明媚であった。一方で、糖尿病患者が多かったり、ゴミの山が一番高い山になったりしていた。食事は問題なく、お米、フライドチキンなどをよく食べた。ラーメンが人気であるが、袋にお湯を満たして食べることに驚いた。

・太平洋戦争に伴う遺骨収集が続いている。ビキニ環礁で被爆した第5福龍丸事件も負の遺産である。同地での原水爆実験は合計67回、広島原爆の7,200発分に及んでいた。

・戦時教育された日本語もあめ玉(キャンデー)、草履など少し残っていた。

・気候変動の影響は大きく、海水レベルが上昇したり、木が倒れたりすることが多い。水源としては空港滑走路の雨水を貯水していた。

・主要産業は漁業、観光業、コプラであるが、国家予算の7割は援助によるものである。

・マーシャル諸島は以前、中国を承認していたが、現在は他の世界12カ国とともに台湾を承認している。

・協力隊事業は2019年に制度変更し、年齢区分を改め、一般案件とシニア案件による区分となった。いずれの区分でも派遣時は同一待遇が適用されるが、シニア案件には別途経験者手当が支給される。

・応募者数は年々減少している。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2019pdf/20191101082.pdf

・“高い技術や経験”が求められるというイメージであった協力隊像を“好奇心と利他心”があれば努力や工夫で活動可能な要請もあるという面を伝えたい。また社会課題の解決やSDGsへの貢献といったリブランディングを進めている。

・複雑化する課題に取り組むため、事業の枠を超えて「JICAグローバルアジェンダ」に取り組んでいる。

・2023年度から帰国後の社会還元表彰を実施したところ、107件の応募があった。大賞に選ばれたのはフィリピンへの派遣者であり、帰国後、義足を3Dプリンターで安価に製造する会社を起業し、最近、フォーブスにも掲載された。

・JOCVからの帰国後は、日本も元気にしていく存在になるよう、地方創生(地域の活性化)、多文化共生社会、起業(国内外の社会課題解決)、所属組織の海外展開など、社会貢献への支援を強化している。本年6月に改訂された開発協力大綱においてもその旨謳われている。

・グローカルプログラム(派遣前型)として、派遣前の隊員のうち希望者に対して、自治体等が実施する地方活性化、地方創生、多文化共生等の取組みに75日間程度、OJT参加することを進めている。

・コロナの際はマーシャル諸島の企画調査員だったが、同地でいち早く対応し、2020年3月に約20名の帰国を支援、中には派遣住居に戻れないまま帰国した者もいた。その後すぐに帰国便が運行しなくなり、5月の再開便で帰国することができた。しかし、グアム経由なので同地で3日隔離され、成田でも隔離、その後2週間の自主隔離があった。

・2020年11月、ベトナムへの再派遣が実現したが、その後は停滞し、待機を余儀なくされた。しかし、本年6月1日現在、65カ国に932名を派遣しており、2024年度までにコロナ禍以前の派遣規模2,000名を目指している。なお、一斉一時帰国後、累計66カ国1,204名を派遣済である。

 

 質疑応答が数回にわたり実施されたが、多くの参加者から多数の質問・意見・要望があった。以下、それらについて簡単に列記する。

・ナミビアでは体育、美術も担当したそうだが、どのような内容か。

・ナミビアの経験はご自身の人生にどう影響したか。

・ナミビアはダイヤモンドの産地と聞いたがどうか。

・ベトナムの看護師による5Sとはどういうことか。

・マーシャル諸島で糖尿病患者が多い理由は何か。

・海外協力隊の選抜試験には何があるか。語学より人間性が大切ではないか。プロの面接官に委ねてはどうか。

・派遣条件の年齢69歳以下を見直してはどうか。

・一般案件、シニア案件の区分が分かりにくい。

・中進国の罠と言われるが、今後はシニアやベテランによる支援が重要ではないか。

・NTTは民営化後、採算に乗らない協力隊事業には派遣しなくなったが、ビジネスにつながると説明しやすい。退職者は比較的容易に応募できるが、現役は難しい。

・世銀プログラムはコストパフォーマンスを強く求めているが、JICAはどうか。

・税金に基づく協力隊事業であるが、目的はビジネスにつながるか、ロマンか、外交か。

・社会還元表彰を10年以内に限定した理由は何か。

・今回の講演を大学、高校、中学などでも話してはどうか。

・オンラインによる支援を拡大してはどうか。

・大規模開発等に対する教育プランを作成し、各国に浸透・展開してはどうか。

 

 上記のような多数の質問・意見・要望に対する講師の答えは、参加者の特権(楽しみ)として省略するが、一つ一つ丁寧に、かつ笑顔で、時には毅然として対応する講師の姿を見て、日本の少し明るい未来を見た感じがした。また、終了後、数名の参加者から、「とても楽しかった」「言いたい放題で失礼しました」「講師によろしくお伝えください」などのメール・電話が来たことも当会初めてのことであった。終了予定は20時30分であったが、21時過ぎまで絶え間ない意見交換があり、真にウェブサロンの雰囲気であった。


2023.5.30会報No.108

第18回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第18回ICT海外情報ウェブサロンが2023年5月27日(土)19時~21時、ウェブ会議室において開催された。講師は、齋藤 邦夫様(元JICAシニア海外ボランティア、元NEC)、演題は「人生100年時代に想うこと」であった。講師はNECご退職後、JICAシニア海外ボランティアとしてインドネシア、マーシャル、ブータンの3回ご経験されており、ご自身のこれまでの人生経験から、他の人とは違った(であろう)経験を主体にお話があった。また、ご参加の皆様からもいろいろなご経験談などをご紹介いただき、真にウェブサロンの雰囲気であった。主な話題を以下に示す。

・私の人生100年時代の区分をご紹介する。また、本多静六博士の人生計画についても考えさせられることが多い。

・小学生の時に鉱石ラジオを自作し、大学生時代にアマチュア無線資格を取得して開局、現在に至るまで多数の想い出がある。

・NEC時代は真空管からトランジスターへの転換期にあたり、半導体集積回路(IC)の開発に心が踊る時を過ごした。

・JICAシニア海外ボランティアとして、インドネシア、マーシャル諸島、ブータンに派遣された。古い通信形態を見たり、改善の提案をするなど、様々な想い出がある。

・白内障(両眼)、慢性硬膜下血腫、僧帽弁閉鎖不全、一時的脳虚血発作、急性前立腺炎、虫垂炎、十二指腸潰瘍(2回)を経験した。

・最近、「人類の起源」(篠田謙一著)を読み、これから「哲学と宗教 全史」(出口治明著)と「超圧縮 地球生物全史」(ヘンリー・ジー著、竹内薫訳)を勉強する予定である。今から始めて、いつ終わるか、終わらないか、分からないが、人生100年時代である。

・これから、時間と空間の、どこへ行くのか・・・、楽しみです。

 

 プレゼン終了後、多数の質問・意見等が提起された。それらについて、以下のとおり項目列挙する。

・アマチュア無線愛好家の行動様式

・アマチュア無線のすすめと今後の普及

・超遅延エコー

・半導体の開発

・JICA海外協力隊の動向

・ブータンの仏教や文化

・太平洋島嶼国と住みたい国

・のろし等による通信

・イランにおけるのろしの跡

・日本語教育と漫画

・インドネシアの首都移転計画

・パプアニューギニアなどでの米中活動

・小樽のニシンと青山御殿

・華僑の働き方、など

 

 終了予定は20時30分であったが、21時15分まで絶え間ない話題交換があり、真にウェブサロンの雰囲気であった。


2023.3.20会報No.107

第17回ICT海外情報ウェブサロン(講演会)模様

 

 第17回ICT海外情報ウェブサロン(講演会)が2023年3月18日(土)19時~21時、ウェブ会議室において開催された。一般財団法人日本ITU協会専務理事の田中和彦様から、「MWC 2023見聞ともっと旅を楽しむ方法の提案」のご講演をいただいた。前半の「MWC2023見聞」については今後、日本ITU協会の研究会などでの報告も計画されているとのことであり、同協会のホームページ(注)を参照してほしい。後半の「もっと旅を楽しむ方法の提案」に関する主な話題については、以下のとおりである。

 (注)ITUホームページ https://www.ituaj.jp/

 

・その国・土地の音楽を収集している。例えば、アメリカ在住時はネイティブアメリカン音楽。韓国滞在時は伽耶琴(カヤグム)。今回のバルセロナではフラメンコ(ギター、パルマ、タップ、踊り)のCDを購入した。

・新しい技術で新しい体験、未知の臨場感、没入感を満たしている。例えば、パノラマ写真(スイングパノラマ写真、パノラマ合成写真)、全天球写真、全天球ビデオ、4Kビデオ+ ハイレゾ・バイノーラル録音などである。

・パノラマ写真として、日本ITU協会のホームページに乳海攪拌を掲載している

 https://www.ituaj.jp/00_sg/20220701_Samudra_Manthan/Samudra_Manthan.html

・武蔵野メディア研究所(MML)は個人的に活動しているものであり、広義(1997年~)には、高速ネットワーク(インターネット、LAN)、最新デジタル技術(高速PC、録音・録画デバイス等)を活用してみる試みとして、高速光回線(FTTH) + GbE + PC + NAS + TV + etc.で運営している。狭義(2013年12月~)には、大容量個人ホームページ「武蔵野メディア研究所」として、商用Webサービス(ぷらら、トコちゃんねる静岡) +自前サーバー(NAS x 2~3) で運営している。

・コンテンツの特徴は、(1)大容量ファイル→数MB~数GB、(2)オリジナルファイル→自家録音・録画、手作り、(3)バイリンガル対応→日本語ページ/英語ページ、(4)ダウンロード可能→そのままのファイルが入手可能、(5)無料→試行ベース、実験ベース、などである。作品とか完成品ではなく、見て・聴いて・試していただくことを期待している。トップページは下図のとおりであり、多数の事例を掲載しているので、ご覧いただければ幸いである。

 http://www13.plala.or.jp/mml/ 又は http://plaza3.dws.ne.jp/~mml/ 

・自宅に設置しているMMLのダイアグラムは下図のとおりである。

 

参加者からは多数の質疑・意見等があり、講師からも回答や示唆があり。活発で密度が濃く、真にウェブサロンの雰囲気であった。

・インターネットの時代になって、ルールも機器利用も昔の電話時代とはかなり異なってきたことを実感した。

・ドイツ人と展示会を共同実施したことがあるが、方法の違いを痛感したことがある。

・360度カメラは山登りなどに使用すると、驚くような映像になる。

・全天球写真・ビデオは自分自身(頭)が写らないよう、テクニックが必要である。

・MMLの設備は遠い将来も引き継がれるか。

・NTTのITU支援に熱気があることを期待する。

・ITU-T局長に尾上誠蔵様が当選、就任されたことは大きな成果であり、注力していることの証拠である。IOWN構想との関連も期待される。

・ICTに関する主戦場が変化していると思う。日本人がGAFAと同じ土俵では戦えない。インフラビジネスはなくならない。IOWNなどの分野に期待している。

・下記のような報道もあり、APN(全光ネットワーク)の導入は既に開始されており、普遍化も意外に早いかも知れない。

① NTT東西、「IOWN1.0」を3月16日提供開始。低遅延&ゆらぎゼロの“オールフォトニクスネットワーク”

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1482781.html 

② NTTとKDDI、光ネットワーク技術のグローバル標準化に向けた基本合意書を締結

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1486609.html 

・WBCにおいて、米国で活躍する日本選手が目覚ましい動きをしているが、NTTも世界に羽ばたいてほしい。

・高齢になっても活動できることに取り組んでいる。


2022.11.27会報No.106

第16回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第16回ICT海外情報ウェブサロン(遠隔井戸端サロン)が2022年11月26日(土)19時~21時15分、ウェブ会議室において開催された。当会の松田幹事による「今どきの海外旅行諸事情」の話題提供があり、参加者からの活発な質疑・意見提起があった。主な話題を以下に示す。

 

・2年前にフライト予約したが、コロナ禍で日程、訪問地などを数回にわたり見直した。ウクライナ関連による飛行ルート変更やフランスの航空管制官ストライキなどが影響に拍車をかけた。北半球世界一周ルートとなった。

・出発当日にも変更があり、ミラノの宿泊予定は不可(No show)となり、パリで航空会社手配の仮宿泊、チューリッヒ経由でフィレンツェを訪問した。旅行終了後、旅程変更による損失補償を航空会社に請求し、2ヶ月後に入金された。

・チューリッヒ乗り継ぎでロストバゲッジがあり、フィレンツェでは不自由な滞在を強いられた。次の便で届くと言われたが、実際は翌日昼頃であった。自分の荷物が積み込まれなかった場面を機内から確認したので、CAに伝えたが、そのまま離陸した。

・フィレンツェでもパリでも、一部観光客を除き、マスク姿はほとんどいなかった。フィレンツェは人口40万人足らずの年であるが、世界中からの観光客で溢れていた。

・今回の旅行で重宝したものとして、①ahamoの利用、②翻訳アプリ、③MySOSが上げられる。①は通信だけでなく歩行、交通機関利用でのナビゲーションなどにも活用した。②は特殊なリクエストなどの際に現地語で会話するのに有効であった。③はワクチン接種証明で円滑な手続きが可能となった。

・航空会社のクレジットカードによる買物でマイレージがたまったので、今回は44万マイルを使用して家族4人分のビジネスクラス航空券を入手したが、これにもかなり苦労があった。

 

 参加者から多数の質問や意見があった。個人企画旅行とパッケージ旅行の比較、良いホテルのコンシェルジュは交渉力が高い、ロストバゲッジの想い出、現地で英語ツアーを手配すると安い、英語ではなくスペイン語が効果的だった経験、元社会科の先生の現地ガイドは裏話などがあって面白い、米国には個人による旅行斡旋事業者が多く非常に親切、南米出張・旅行の想い出、自動車による現地国内旅行は風景・想い出が変わる、ロシアやアフリカを訪問してみたい、ストラスブルグ(フランス)はお勧め、などなど。このように、予定の20時30分を1時間くらい越えるまで密度の濃い熱い意見交換があり、真にウェブサロンの雰囲気であった。


2022.9.26会報No.105

第15回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第15回ICT海外情報ウェブサロン(遠隔井戸端サロン)が2022年9月24日(土)19時~20時30分、ウェブ会議室において開催された。当会の安達幹事による「大規模通信障害を振り返ってみたら」の約100ページにわたるプレゼンを題材にして、参加者からの活発な質疑・意見提起があった。主な話題を以下に示す。

 

・本年7月2日(土)午前1時に発生したKDDIの大規模通信障害は、音声データとして保存するVoLTEの交換機故障が原因で通信が輻輳したものである。

・スマートホンのiPhoneとAndroidで挙動の違いがあった。

・通信障害時に契約していた3655万人に一律200円(税別)を支払うなどの対応をした。

・本年7月の電気通信主任技術者試験でVoLTEに関する出題があった。

・スマートホン利用者の障害時対策として、eSIM契約が増加した。

・災害時や大規模障害時の通信会社間ローミングの議論が進行している。

・本年2月7日のNTTドコモの通信障害は、IPv6シングルスタック方式導入によるサーバー負荷増であった。

・ソフトバンクでも2018年12月、ソフトウェア不具合による通信障害が発生した。

・マイクロソフトのTeams通信障害は世界各国で発生し多大な影響があった。

・台風による通信への影響もある。

・古い話として、世田谷電話局ケーブル火災があった。1984年11月16日(金)11時50分頃、洞道内で工事中の電話ケーブルから出火した。対策として、難燃ケーブルの採用などがあった。

 

 これに関連して、世田谷電話局の勤務経験がある山川(当会事務局長)から最近の世田谷ビルの紹介があった。また、当時、難燃ケーブルの技術開発をしていた田中様から、開発状況の動画紹介があった。

 

 参加者から多数の質問・意見があった。VoLTEはパケット通信か、運営体制が下請任せでないか、回線切替えは3人が監視している、ルーター等の日本技術がない、米国には洞道はない、洞道の活用方法のアイデア、ローミング時の回線容量確保、メタルケーブル・公衆電話ボックス・マイクロ基地局の現状、ソフトバグは残る、IOWNに期待、未使用テレカは高額で取引できる、横須賀通研のテレカ、地震対策が必要、SNSは災害に強い、通信トラヒック規制、海底線布設船で海上から通信確保、飛行機で通信確保、アマチュア無線、ドローン、宅内残置方式、などなど。このように、予定の20時30分を1時間くらい越えるまで密度の濃い熱い意見交換があり、真にウェブサロンの雰囲気であった。


2022.8.1会報No.104

第14回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第14回ICT海外情報ウェブサロン(遠隔井戸端サロン)が2022年7月30日(土)19時~21時、ウェブ会議室において開催された。当会の倉島幹事による「瞳孔の動きは脳の動き」のプレゼンを題材にして、参加者からの活発な質疑・意見提起があった。主な話題を以下に示す。

 

・瞳孔径の変化は無意識に情動を表わす。興味を持った情動が喚起されたりした状態では、瞳孔が大きくなる。一所懸命に問題に取り組んでいる時も瞳孔が開く。これらは意思とは無関係でコントロールは難しく、おそらく不可能である。猫が驚いた時に丸い目になるが、瞳孔が開いている典型例である。

・情動(emotion)は無意識な反応であり、感情(feeling)は意識的な変化が可能と定義している。

・瞳孔径を計測することにより情動反応を判定でき、顔の表情解析をすることにより感情反応を判定できる。これに関する研究論文は57年前に出ているが、事業化するのは初めてであろう。感性分析システムとして、特許取得済である。なお、人の眼がどこを見ているか計測するアイトラッキング(視線計測)は昔から存在しており、異なるものである。

・人が視認している情景、目の動き(瞳孔・視線の動き)、体の動き、身体温度変化、表情の変化を計測する方法として非拘束型システム(デスクトップ型)とゴーグル型システム(ポータブル型)がある。前者は、顔撮影カメラ、ディスプレイ、モニターディスプレイ、眼球追跡カメラ、瞳孔径撮影カメラ、LED赤外線照射などで構成している。後者は、輝度計、視野カメラ、LED赤外線照射、眼球撮影カメラで構成している。

 

・瞳孔径は光の明暗でも反応するので、それを除去するとともに、基準瞳孔径との比較により、注目度という指標を算出している。

・視聴者にとって、その番組のインパクト度合いが分かるものとして、視聴質(=視認率×注目率×感情率)という概念を提起しており、特許取得済である。視認率は視聴率(テレビのチャネルがオン、録画含む)×アクセス率(視聴者の視線がチャネルにアクセス)である。注目率は画面を見ている注目度の大きさである。感情率は基本6感情(幸福、驚き、悲しみ、嫌悪、恐怖、怒り)の大きさである。

・テレビコマーシャルの注目度分布を調査したところ、左上の美しい女性に注目が集中し、右下の商品名には注目されていないこともあった。

・2者択一等のアンケートがあるが、選択肢への注目度(率)を計算することにより、回答確信率を示すことができる。

・科学警察研究所に採用された。ウソ発見器の代わりになるかもしれない。

・応用範囲は非常に幅広い。

① 映画、テレビ番組、コマーシャル等の映像コンテンツ評価

② 商品評価(購買意欲度評価)

③ 空間デザイン診断

④ 学習システム評価(学習意欲度)

⑤ アンケート調査(回答確信度)

⑥ 脳活動のレベル測定(脳疾患、自律神経失調症)

⑦ 五感の反応レベル測定

⑧ 相性診断

⑨ ロボット応対診断(顧客測定)

⑩ 赤ん坊等の言葉を話せない人や動物の意思伝達

⑪ 犯罪者の判定

⑫ ドライバーの眠気、不注意状態感知

⑬ 労働安全衛生上の危険予知

⑭ 適性診断

⑮ 労働熟練度診断

⑯ 運動選手適性診断

⑰ ゲームエキサイト度診断

⑱ 映像コンテンツ選択優先度判定

 

・4大学と共同研究しているが、今のところ民間企業は対応してくれない。ご一緒に研究していただける方をお待ちしております。

 

 参加者から多数の質問・意見があった。瞳の色が違う外国人も同様に対応できるか、眼は進化しないのか、同様技術の研究者を知っている、心拍などはノイズとせずに利用できないか、政府の支援が必要ではないか、学生も研究機関には関心が低い、顔認証と組み合わせてはどうか、などなど。このように、予定の21時まで密度の濃い熱い意見交換があり、中締め後も個室歓談や全体歓談があり、真にウェブサロンの雰囲気であった。


2022.5.23会報No.103

第13回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第13回ICT海外情報ウェブサロン(遠隔井戸端サロン)が2022年5月21日(土)20時~22時、ウェブにおいて開催された。当会の山川(事務局長)による「公的統計データの活用~少し斜めから見てみたら~」のプレゼンを題材にして、参加者からの活発な質疑・意見提起があった。主な話題を以下に示す。

 

・政府統計e-Statには非常に多くの統計データがある。その中から、人口ピラミッド、家計調査、統計GISを紹介する。特に、統計GISでリッチレポートを作成すると、簡単に商圏内の年齢層別人口、産業別事業者数などがすぐに得られる。

・Credit Suisseのサイトには、世界各国の貧富の格差が掲載されている。2021年調査で、ロシアは1%の人が58.2%の富を占めており、世界一の格差となっている。日本は18.2%であり、掲載国の中ではベルギーの14.9%に次いで格差が小さい。

https://www.credit-suisse.com/about-us/en/reports-research/global-wealth-report.html

・Charities Aid Foundationのサイトには、世界各国の寄付・他者支援・ボランティア活動のランクが掲載されている。2021年調査では、インドネシアが1位、ミャンマーが4位と健闘しているが、日本は114か国中、最下位である。日本は貧富の格差が小さいので、支援すべき対象が少ないのではないか、との意見があったが、宗教や文化の違いなども加味したとしても、最下位はかなり情けない感じがする。

https://www.cafonline.org/docs/default-source/about-us-research/cafworldgivingindex2021_report_web2_100621.pdf

・統計データの活用について学習するため、総務省統計局データサイエンススクールのサイトを活用した。また、(株)ドコモgaccoによるJMOOCの各種データサイエンス講座(無料)なども有益であった。学習する過程で、日本統計学会認定の統計調査士という資格があることを知り、昨年挑戦したところ運良く合格した。

http://www.stat.go.jp/dss/index.html

https://gacco.org/

https://www.toukei-kentei.jp/about/tyousa/

・ナイチンゲールは近代看護教育で有名であるが、英国王立統計学会の初めての女性メンバーであり、統計学者でもある。1854年に従軍したクリミア戦争において、戦い自体による死亡者数より、病院の衛生環境・感染症等による死亡者数がはるかに大きいことを楔(Wedge)の図で示し、英国政府に衛生環境等の改善を訴えて、死亡者数激減を成し遂げた。統計データに基づく政策決定(EBPM: Evidence Based Policy Making)の重要性を示す好事例である。

・統計データを読む際には、留意すべきことも多い。例えば、以下の統計を斜めから見るとどうなるか考えてほしい。

①国別国際観光客到着数は、フランスが世界一、中国がアジア1位だが・・・

②平均気温が毎年上がっており、地球温暖化が進んでいると言われるが・・・

③イノベーション(例えば、郵便→メール)はGDPを下げるが、生活の質は上がった感じがするが・・・

④エンゲル係数が近年上昇しているが、収入減になっているのか・・・

⑤GDPが好景気でも肌感覚とずれがないか・・・

⑥人手不足なのに、なぜ給料は上がらないのか・・・

⑦若者の海外旅行離れは進んでいるか・・・

⑧若者の新聞・飲酒・喫煙離れは進んでいるか・・・

 

 参加者の高橋様からご自身の統計データについて、以下のとおりご紹介があった。

・インドからの留学生が新型コロナ感染症のため、来日できなくなったことを契機にして、インドの感染状況を綿密に調査・フォローしている。

・コロナの変種株ごとに見ると、すべて正規分布であり、約45日で収束している。政策により、ピーク値を下げることは可能であるが、収束期間を短縮することはできないことが示されている。

・中国の友人から新型コロナ感染症関連資料を受領したが、かなり早い時期からマスク等の使用方法が紹介されている。

   

 他にも多くの参加者から、ほぼ間断なく活発な質疑・意見提起があった。

・クレディスイスは富裕層のみを顧客にしており、統計データはしっかりしている。

・ロシアに携帯電話を販売しようとしたが、貧しい人達が多く、全く売れなかった。

・イスラム教には、富者は貧者に施しを与えなくてはいけないという戒律がある。

・各種統計データの相互関係や社会システム等との関連を分析すると面白そうだ。

・統計調査、特に全数調査は費用がかかるので、ICTを活用した統計調査が進展することを期待している。

・統計の改ざん事件があったが、信用してもいいのか。

・基幹統計(53件)については、報告義務があり、違反行為に対しては罰則がある。

・政府統計の運営体制として集中型と分散型があるが、前者はプロ集団になる反面、各省庁の政策との連携不足が生じやすい。一方、後者は日本が採用しているが、統計関係者が分散するため、各省庁に統計のプロが育ちにくく、最近のように、統計不正などが生じやすいかもしれない。

 

 このように、予定の21時30分をはるかに越えて22時まで熱い意見交換があり、真にウェブサロンの雰囲気であった。


2022.2.28

第12回ICT海外情報ウェブ講演会(サロン)模様

 

 第12回ICT海外情報ウェブ講演会(サロン)が2022年2月26日(土)19時30分~21時、ウェブにおいて開催された。講師は、西村誠司様(元NTT、元ノーザンテレコム)、演題は『スタートアップ国家イスラエル〜多くのスタートアップと起業家を生む源泉』であった。主な話題を以下に示す。

・イスラエルは1948年建国され、人口約923万人、ユダヤ人(約74%)、アラブ人(約21%)、170か国以上から移民を受け入れ、25歳以下の人口42%という国である。兵役が男子3年、女子19~24ヶ月ある(アラブ人除く)。一人あたりGDPは2021年43,688ドル、経済成長率3.5%であった。

・ユダヤ人とはユダヤ教を信じる人のことであり、世界で1,400万人、うちイスラエルに634万人、米国570万人、フランス46万人、カナダ39万人いる。戒律により、超正統派、正統派、保守派、改革派、世俗派などに分かれている。安息日は金曜日の日没から土曜日の日没までであり、日曜日は働く。

・2004年、イスラエル系スタートアップ企業パッサベ社(GE-PONチップベンダー)日本法人立上げに参画したが、同社は2006年、NASDAQ上場企業PMC-Sierra社に$300Mで買収統合された。その際、日本法人社長を任され、2015年まで務めた。

・2016年に通訳案内士を取得、最初のガイドは豪華客船による桜島観光であった。

・イスラエルのスタートアップへの投資額は2018年6.49Bドルであったが、2021年には25.86Bドルに急増した。企業のITインフラ、セキュリティ、フィンテックなどが多く、またアグリテックも伸びている。

・日本企業も、クボタがドローンによる果樹収穫でイスラエル企業に出資、オリンパスが泌尿器向け治療機器メーカーを買収した。NTTが2021年5月、イスラエル現地法人を設立した。同社CEOは元在日イスラエル大使館経済公使であり、顔見知りの方である。日本のイスラエル企業への投資額は2021年、29億4,500万ドル(約3,400億円)であった。

・インテルはモービルアイ社を15.3BドルでM&Aし、グーグルはウェイズ社、また三菱田辺製薬がNeuroDerm社を買収するなど、活発な動きがある。また、ユニコーンもイスラエルで多数生まれているが、日本では2020年のユニコーン企業がPreferred Networksなど7社だけであった。

・イスラエルの最近の出来事として、2021年1月世界最速のワクチン接種開始、5月ハマスからのロケット弾4,500発と1,000回以上の空爆反撃、6月12年ぶりの政権交代(アラブ政党の初参加)、2022年1月UAEとのアブラハム合意などがある。

・イスラエル国防軍(IDF)には、タルピオットというエリート養成プログラムがある。毎年、高校生約1万人から50名を選抜し、最初の3年間はヘブライ大学で物理、数学、コンピュータサイエンスの学位取得、その後6年間はIDFで技術開発に従事する。卒業生はアカデミックに一部行くが、多数は産業界に行き、スタートアップの原動力となっている。出る杭を伸ばす戦略である。

・スタートアップした起業家達は多数のスタートアップに関わったり、エグジットやIPOを目指している。

・起業家DNAとして、①自分がボスでありたい、②個人や違いを重視、③間違うことは恥ではない、間違いを正すことから学ぶ、④失敗に寛容(挽回可能)、⑤形式にとらわれない、上司を批判することも許される、⑥建前でなく本音、⑦臨機応変、がある。

・1993年、政府が100Mドルのファンド10件のベンチャーキャピタル(VC)基金ヨズマプログラムを創設した。民間のVCがスタートアップ企業に60%の資金を出せば、政府が残りの40%の資金を出し、投資が成功した場合、民間VCは政府出資分を5年後に安く買い取り可能である。多くの海外VCが活用し、10年間で240件以上のVC基金が誕生するなど、イスラエル国内のVC産業の成長に貢献した。日本のVC支援は周回遅れの感がある。

・まとめとして、スタートアップ国家イスラエルの源泉は、①国家存続が国是、②多様な考え方がイノベーションを生む、③出る杭を伸ばす、④失敗を恐れず、失敗を許す社会、⑤ゼロから1を生む、⑦デジタル国家(国家セキュリティ確保から新たな経済成長エンジン)、⑧IDF(兵役)とタルピオット、R&D、8200(サイバー)部隊、予備役ネットワーク、⑨ヨズマ、弱者の起業支援、⑩ユダヤネットワーク、である。

 

 講演後、イスラエルが金融やセキュリティで強い理由、ユダヤ人の性格、国家の次期戦略、ユダヤ財閥の支援、通信事情、ITUでのサポートなど、多数の質問・意見があった。特に、ミサイル防御など日々危険にさらされ、常に実戦しながらの技術開発・応用が行われており、日本の現状との大きな差異を印象づけられるものであった。

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21.12.5会報No.101

第11回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第11回ICT海外情報ウェブサロンが2021年12月4日(土)19時30分~21時(その後、22時近くまで自由懇談)、ウェブ会議室において開催された。当会の佐竹幹事から「グアテマラと中南米の話をしてみたら」の話題提供があり、盛りだくさんで時間が過ぎるのを忘れるくらいであった。主な話題を以下に示す。

・初めての海外が、JICA専門家として派遣されたグアテマラであった。Guatelで無線関係の業務に従事した。

・緯度はタイと同じくらいであるが、高度1500メートルにあり、常春という人もいる。

・公用語はスペイン語であるが、地方はマヤ系言語であり、21種類くらいある。日常も業務もスペイン語で対応した。

・マヤ文明として有名なティカル遺跡に行ってきた。グアテマラシティから300kmくらいの距離にある。多数の遺跡があるが、まだ未開拓の遺跡も多い。

・1号神殿はジャガー神殿とも呼ばれ、高さは50~60メートルくらいある。どの神殿も必ずペアで建設されている。

・グアテマラコーヒーはアンティグアで生産されるものが有名である。土産物店や輸出用のコーヒーは美味であるが、市中で売っているコーヒーはあまり美味ではなかった。

・グアテマラ織は手作業で織られており、グアテマラの民族衣装にもなっている。チチカステナンゴでは週2日ほど市場が開かれている。衣装、布地だけでなく、帽子や財布もある。

 質問・意見は多数あり、真にウェブサロン(遠隔井戸端会議)の雰囲気であった。主な話題を以下に示す。

・1974年~1977年にGuatelにJICA専門家として派遣され、電話線路業務に携わった。当時はイギリス、ドイツなどの専門家も混在していて、激論になることもあった。無線技術はNEC、沖電気などの日本メーカーが進んでいたが、今はその面影はない。いつか復活してほしいものである。

・グアテマラは以前、内戦があったが、今はすっかり変化しており、ビルやショッピングセンターが多数建っている。

・ペルー、パラグアイ、パナマにJICA専門家として派遣された。懐かしい想い出が多数ある。

・祖父がペルーに移住し、現地で亡くなった。中南米にはブラジル、チリなど、テレビ取材で何回も訪問した。中南米と一括りで言うが、各国とも非常に異なっている。

・ペルー、メキシコ、エルサルバドルを旅行した。中南米は陽気な感じに紹介されることが多いが、実は地味な人々である。グアテマラはマヤ人50%、白人との混血40%で、白人自体はほとんどいない。

・チリとメキシコに会社を設立した経験があるが、チリはかなり几帳面で儲かった反面、メキシコは陽気で自由な雰囲気であり、損失を計上してしまった。

・メキシコには4年間駐在したが、自由さ(いい加減さ)は事業所によると思う。勤務した事業所は女性が6割を占め、トップも女性であった。

・フィリピンでも女性の方が信用できることが多かった。女性も専門性が高い。

・チリのカルメネール赤ワインが好きであるが、最近は価格が高くなった。

・アルゼンチンはタンゴが好きな国である。

・グアテマラの音楽はマリンバである。木琴のようなもので、瓢箪を共鳴板として吊したものもあり、澄んだ音が出る。

・ブラジルはサンバとボサノバが特徴的である。

・メキシコでは、マリアッチという楽団を成人式、誕生日、恋人への求愛時、さらには告別式などに呼んで、トランペット、ギターなどの大音響で歌い踊る。華やかに死者を弔うのは、かなり文化の違いを感じるところである。

・アフリカの告別式も賑やかである。泣き女を雇うこともある。

・マチュピチュに旅行したことがある。NHKの中継クルーと同じホテルで出会った。

・中南米はサッカーが強いが、グアテマラは上位ではない。

・パキスタンにJICA専門家として派遣されたが、イスラムでは酒は法度で、女性の外出も制限されており、今日の話は羨ましい限りである。

 上記のように、政治、経済、文化等多岐にわたる中南米の経験談が活発に交わされ、また終了後も個室で話す参加者もあり、時間が過ぎるのを忘れるウェブサロンであった。


2021.10.1会報No.100

第10回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第10回ICT海外情報ウェブサロンが2021年9月25日(土)19時30分~21時(その後、22時まで自由懇談)、ウェブ会議室において開催された。当会の安達幹事から「インドを初めて旅したら」のプレゼンがあり、盛りだくさんで時間が過ぎるのを忘れるくらいであった。主な話題を以下に示す。

 

・タジマハール、レッドフォード、クトゥブ・ミナール、ラールキラー、コチン等の旅巡り

・インドの(裕福な)家庭を訪問

・ヒンズー教の浸透と礼節

・オールドデリーの貧民街の生活模様

・ガンジーの教え

・コルカタでの結婚式:18時開始の案内どおり会場に行ったが、誰もいなくて、19時頃からボツボツと集まってきて延々4時間、格式張った挨拶はなかった。ゲストスピーチをし、「ふるさと」の歌を歌い、クイズゲームでお土産を配ったりした。

・政治・経済・文化:今回を機会として、大統領、首相、ヤマハ、キャノン、スズキ、インフォシス研究所等の情報を収集した。首相が国家としての実権を握っており、大統領は主流ではない人が選ばれているようだ。

 

 質問・意見は多数あり、真にウェブサロン(遠隔井戸端会議)の雰囲気であった。主な話題を以下に示す。

 

・35年前にバンガロールのソフト開発を視察したことがあるが、インフォシスの社長が社員教育に熱心であったことに感銘を受けた。当時は小さな企業であったが、今では世界的な大企業であり、NTT社員がインフォシスに勉強しに行くとのことである。

・インドからの留学生はカースト制の上の方の人達ではないか。下位の人達は自己研鑽に努めて、這い上がるしかないので、インドの活力は非常に大きい。地方では、カースト制が強く残っており、女性差別・なぶりなどの事件がある。

・インド人は子どもの頃から英語を話しており、世界的な競争力がある。一方、公用語は多数あるようで、ベンガル語は分かるが、他の地方語は分からない状況らしい。

・スリランカではエンジニアとテクニシャンは鮮明に区分けされていたため、その中間職位を新たに設置し、テクニシャンからエンジニアへの昇進を可能にしたところ、エンジニアには不評だった。人事・労務については、カーストや出身地などを配慮する必要がある。

・スリランカの民族紛争は、今では治まっているようだが、以前はアタッシュケースの中に鉄砲防護用の鉄板を入れて行動していた。

・インドなど7か国で構成する組織があり、その会合に参加したことがあるが、インド代表は他国に対して威張っていた。インドは周辺国へのODAや武力防衛で貢献しているからだろう。

・日本のカレーのルーツはイギリスであり、インド人がイギリスで広めたものがルーの形で発展したものである。コモンウェルスのスポーツ大会等を含め、イギリスの影響は小さくない。

・インドを数回訪問したが、毎回腹をこわした。スリランカにも行ったが、自爆テロがあった。⇒今では安定しているようだ。ただし、野原には地雷が残っているらしい。

・電気通信大学ではインドの10大学と学生の交流を実施している。コロナで2年間は延期しているが、欧州への留学については本年6月から再開された。オンラインではなかなか国際感覚が育まれない。

 

インドのGDPは10年後に日本を追い抜くかとの質問に対して、数名の参加者が挙手していたが、今後ともインドの動向に目が離せないことが再認識されるウェブサロンであった。


2021.8.1会報No.99

第9回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第9回ICT海外情報ウェブサロンが2021年7月17日(土)19時30分~21時30分、ウェブ会議室において開催された。JICAクロスロード7月号(29ページ)に掲載された当会記事を見て初参加された方(女性)もあり、また8月上旬にガーナへ出張する佐々木様による飛び入りの話題提供や当会の倉島幹事から「パキスタン辺境地の話をしてみたら」のプレゼンがあり、盛りだくさんで時間の過ぎるのを忘れるくらいであった。主な話題を以下に示す。

 

<佐々木様>

・直下型地震に対応するセンサー内蔵地震速報装置(10カ国語対応)を世界に向けて販売している。

・地震発生時は身の安全を確保することが大切であり、避難訓練などに力を入れている。ルーマニア、ガーナ、パプアニューギニアなどでの避難訓練は大変好評だった。

・コロナ禍ではあるが、8月上旬に再度、ガーナに出張するほか、9月と10月にも海外出張を予定している。

 

<倉島幹事>

・かなり古い話であるが、JICA専門家としてパキスタンに派遣され、中央電気通信研究所に勤務したので、当時の写真を探し出してきた。⇒風光明媚で、ホッとする風景の連続に非常に感動した。

・研究所の給水栓の不始末で床が濡れて通信装置が危険な状態になった時、JICA専門家は急いでモップで拭いていたが、現地技術者はカースト制のため、掃除係が来るのを待つだけだった。

・技術協力は、あまりうまく進捗できなかった。

・住居は300坪、床はすべて大理石、6畳ほどのバス・トイレが各部屋にあった。

・第2次世界大戦中、命がけで日本側を支援したブルハヌ・ウッディンというパキスタンのチトラル王族と知り合った。戦後も、カラコルム山脈での日本人遭難の際に、捜索活動を強力に支援した。

・イスラマバードで借りた住居は彼の親戚が建てたことが後でわかったが、縁を感じるものだった。

・彼との縁で、パキスタン辺境地のチトラルの城で食事をしたり、おとぎの国のカラーシャ族(死者をお祭りで送る、帽子に海で取れる貝飾りの不思議)に合うことができた。その他、仏像発祥地のガンダーラ、インダス文明発祥地のモヘンジョダロ、アレキサンダー大王が行軍したカイバル峠など、今は旅行できない辺境地を訪問することができた。

・アフガニスタン難民キャンプのテント群もあった。

・イスラム教は、信仰告白(シャハーダ)、礼拝(サラー)、喜捨(ザカート)、断食(サウム)、巡礼(ハッジ)が基本である。

・ジハード(聖戦)の背景、ハラムと豚肉、女性の待遇(物・財産、教育、重刑等)、ムトア婚(偽装売春婚)なども知ることができた。

・日本人としては、①イスラム教を冒涜しない(コーランを粗末にしない)、②ハラムがあることを理解する、③女性の待遇が異なる(ミニスカート禁止等)、④一日5回の礼拝を邪魔しない、などに気を付けることが必要だ。

・上記以外にも、一般に話せないことがいろいろとある。

 

 質疑応答は多くの参加者から多数あり、真に(ウェブ)サロンの雰囲気であった。以下は一部の回答例である。

・今回の話をウィキペディアに掲載しては、という提案は、一般の社会からみて不適切と思われるかもしれない部分があるので難しい。

・海外研修生の校長先生をしていた時に、イスラム教徒の研修生が本国には一人の奥さんがいるにも関わらず、日本人コーディネーターを好きになってしまい、妻にしたいとのことで、苦労したことがある。

・メッカから遠くなるほど、イスラム教の厳格さが緩くなる感じがする。

・イスラム教では、何かを贈った時、持てる者から受け取るのは当然と思われることがある(喜捨ということ)。

 

 上記以外にも、参加者のご経験談として、イスラム教は人による戒律だ、イスラム教は強者が弱者を助けるしきたりがある一方、仏教徒は奉仕活動が少ないのではないか、メディアは事実の80~90%は言えないので報道されていることが全てであるとは思わないように、などのご意見もあった。

 また、今回初参加された方はJICA青年海外協力隊に応募したとのことであり、語学力を心配していることに対して、JICAで語学トレーニングがあり、また語学力よりも現地で明るく楽しく活動することが大切、との経験者によるエールがあった。


30th May 2021

第8回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第8回ICT海外情報ウェブサロンが2021年5月29日(土)19時30分~21時、ウェブ会議室において開催された。当会の山川(事務局長)から「タイ国TT&T社の経験談」をプレゼンし、参加の皆様から各自のタイの想い出等について話があった。参加者の35%以上がタイ駐在の経験があり、TT&T社については参加者の100%が知っているという、あたかもタイ同窓会のような雰囲気であった。現在もタイとの関係を維持している方もおり、高瀬幸雄様からはタイ人技能実習生の特定技能への在留資格変更支援の話があった。また、ウェブサロン内に個室を設置しているが、その利用もあり、旧交を深く温めることができたとのことだった。プレゼンの主な話題を以下に示す。

・タイの豪雨被害は2011年だけでなく、日常茶飯事だ。

・タイは貧富の格差が世界一(40か国比較)という側面もある。

・TT&T社は2002年度、2003年度連続黒字にV字回復した。NTT関係者の一部には「TT&T社はいつも赤字」と思っている方がいるが、それは誤解である。

・社員へのボーナスは長くゼロであったが、KPIに基づくボーナスシステムと黒字化により、社員へのボーナスが支給再開された。いつも笑顔のタイ人社員が、さらに笑顔になった。

・社長交代により、目に見える成果があったが、新社長のヘッドハンティング等に深く関与した。

・技術サポートだけでなく、経営全般へのサポートが効果的だった。

・日本は最早、貿易立国ではなく、海外現地法人からの配当が国際収支を支えている。

・NTTは2005年にTT&T社から撤退したが、その成否を今、問い直す。

・営業活動を活性化するにはわかりやすいセールストークが必要であり、TOTとTT&Tの2社の回線(2ルート化)によるリスク回避策(ラインバランシング)は有効であった。

・新サービスの開発推進により、競争意識の徹底が図られ、競合他社に先駆けた自主的な営業活動が促進された。

・IP技術者の育成は当時珍しい遠隔とリアルのハイブリッド方式で実施し、非常に好評であった。

・外国人としては信頼醸成が大切であり、主要株主連携のほか、仏門修行、日本語教育ボランティア活動などを実行した。

・タイは日本以上に学歴社会である。

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2nd May 2021

第7回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第7回ICT海外情報ウェブサロンが2021年4月17日(土)19時30分~21時、ウェブ会議室において開催された。堀尾健人様(中小企業診断士・ITコーディネータ)から「熊本南部豪雨で被災した実家(旅館)と復興に向けて」のプレゼンがあり、昨年の熊本南部豪雨水害の被災状況、被災した実家(旅館)、人吉の観光(復興後の旅へのお誘い)、地域の治水対策、ダムの課題など、さらには東日本大震災10年にあたり、岩手県大船渡市での災害と復興支援の事例や、高円寺にある大船渡のアンテナショップ「三陸SUN」(旨い酒の肴)などのご紹介があった。主な話題を以下に示す。

・近年は毎年、大きな災害が発生している。

・実家の「人吉旅館」は昭和9年の創業時の姿を残し、近代和風建築としての良質な造りが「国の登録有形文化財」として高く評価され、落ち着いた素晴らしい旅館である。

・2020年7月4日、熊本県人吉市を襲った豪雨により、人吉旅館は壊滅的な被害を受けた。しかし現在、復旧作業を急ピッチで実施しており、今秋には一部再開するので、ぜひいつかお越しください。

・治水対策としては、気候変動や社会状況の変化などを踏まえ、河川の流域のあらゆる関係者が協働して流域全体で行う「流域治水」へ転換する方向である。

・12年前に計画を白紙撤回した球磨川水系の川辺川ダム計画が復活に向けて動き出した。

・普段は水を貯めず、大雨時のみ貯める流水型ダムにすることにより、環境への負荷を軽減できる。

・防災・減災、災害検知・通知へのICT/IoTの活用事例として、河川監視カメラ、農業用水路の冠水遠隔監視、有害鳥獣遠隔監視、熊本市ハザードマップ(スマホ版)、東京都水位測定スマートマンホールなどがある。

・東日本大震災において、福山 宏氏は岩手県大船渡市を中心に復興支援した。つむぎプロジェクトを立上げ、身元確認システムの構築、Wi-Fi防災情報基盤、子供たちの学習支援、ねまらいんコミュニティ放送、コミュニティづくりパソコン教室、大船渡市ふるさとテレワークセンター、ギークハウス三陸大船渡シェアハウス、スマートキャリアカレッジ、スマートビジネスオフィス、自転車モトクロスBMXレースコースなど、数々の施策を展開し、「みんなが生き続けるためのシステム」を創っている。

・大船渡市は2017年3月、東京都杉並区高円寺(丸ノ内線東高円寺駅より徒歩2分)に大船渡アンテナショップ「三陸SUN」を開設した。ぜひ一度、お越しください。

 人吉旅館 http://www.hitoyoshiryokan.com/ 三陸SUN http://sanriku-sun.com/ 

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2021.3.1会報No.97

第6回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第6回ICT海外情報ウェブサロンが2021年2月20日(土)13時30分~15時30分、ウェブ会議室において開催された。テーマは「旅の想い出(その2)」であり、冒頭、当会の宮村特別顧問(元駐ケニア日本国特命全権大使、元NTT常務取締役)から、ご挨拶及び乾杯のご発声があった。ご挨拶の内容は大略次のとおりであった。

・ICT海外ボランティア会(ICTOV)との関係は、現在の石井特別顧問と加藤顧問から、当会創設当時に依頼があり、それ以来、特別顧問を仰せつかっている。

・NTT在職時は当時の最高益を達成した反面、株価下落への対処に苦労した。

・ゴルフのエージシュートに倣い、年齢と同数の国を訪問するというエージカントリーを達成していたが、昨今の状況から、現在74歳で73か国となり、早く外国旅行できる状態に戻ってほしいと思っている。

・当会が今後とも未来に繋ぐよう祈念して乾杯!

 

 続いて、当会の松田幹事が「北半球一周の旅の想い出」を紹介したことを皮切りに、加藤顧問による東北徒歩の旅、高橋様によるボルネオの旅のご紹介があり、堀尾様が準備されたプレゼンは時間切れ(持ち越し)となる活況であった。欧米からアジア(ボルネオ)、さらには日本(東北)までカバーした、ICT海外ボランティア会(ICTOV)にふさわしい真にインターナショナルな話題となった。その中で、加藤顧問のプレゼンは大略次のとおりであった。

・故郷の仙台と東京間を列車で何度往復したことか、その度に車窓から見える自然豊かな東北路をのんびりと何日もかけて歩いてみたいと思い、そして退職後、長年の念願の実現を思いたった。

・2008年5月、上野-仙台間300kmの歩きを始めた。そしてその楽しみが身にしみて、さらに足を伸ばし、山形経由で新潟県に及んだ。その間、3.11東日本大震災で大きな被害を蒙った太平洋沿岸や、戦時中疎開し終戦を迎えた寒河江(山形県)を訪れた。そして最近は自宅(横浜市)より比較的近い八王子から甲州街道に沿いに松本まで歩いた。その間800kmを超える。これは13年に亘る遅々とした旅ではあるが、いろんな意味で日本の美しさを再発見する良い機会でもあった。

・仙石線の東野(とうの)駅の残骸を見たときは涙が出る思いだった。駅舎は消え、ホームはかすかな土の盛り上がその痕跡を残すのみで、あの重い鉄の線路も枕木も全て流されていて、津波の恐ろしさを実感した。これらの駅はいずれ内陸の高台に移るのだそうだが、それにはあと2~3年は掛かるとのことで、街ぐるみの移動がなされるようだ。ホッとすることもあった。元田畑だった所に菜の花が一面に咲き、土手に手植えの草花が色鮮やかに花を咲かせていた。弔いの花かも知れない。侘しさも感じた。この辺には幼いころよく海水浴に来たところで感慨もひとしおである。被災された現地の方々は逞しく、復興への力強い歩みも確信した。


2021.2.1会報No.96

第5回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第5回ICT海外情報ウェブサロンが2020年12月12日(土)19時30分~21時、ウェブ会議室において開催された。テーマは「2020年を振り返って」であった。当会の久保幹事が京都から参加し、「清水寺における今年の漢字は何か」と問いかけ、また参加者から本年の想い出・考えたことなどが語られた。農業や学生海外派遣への感染症の影響、熊本洪水、健康のほか、逆にコロナ太りで仕事が多忙になった話など、バラエティ富むサロンとなった。2021年は良い年になるよう、全員で万歳三唱し、一年を締めくくった。


2020.12.1会報No.95

4ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第4ICT海外情報ウェブサロンが20201031()1930分~21時、ウェブ会議室において開催された。テーマは「旅の想い出」であり、当会の佐竹幹事を皮切りに、参加者の旅の想い出・考えたことなどが語られた。特に、(一財)日本ITU協会の田中専務理事の超技巧カメラワークによるブダペストやバンコクの映像に一同感嘆していた。また、NTTIOWN等の新戦略に関する質問・意見が湧き出るなど、サロンらしい自由闊達な場となった。なお、田中様から下記サイトのご紹介があった。

<ブダペスト ドナウ川風景>

http://www13.plala.or.jp/mml/Contents/20190909_Budapest_Donau/20190909_Budapest_Donau_J.html 

<バンコック 風景>

http://www13.plala.or.jp/mml/Contents/20161114_Thailand/20161114_Thailand_J.html 

<武蔵野メディア研究所:個人HP>

http://www13.plala.or.jp/mml/ 


2020.8.31

3ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 3ICT海外情報ウェブサロンが2020829()1930分~21時、ウェブ会議室において開催された。テーマは「外国語学習をしてみたら」であり、当会の安達幹事からトーストマスターズ(世界143か国、36万人の会員を有するパブリックスピーチ学習団体)を紹介し、話題のきっかけを作った。また、ウェブ会議室システムの投票機能を活用していくつかの話題候補の中から話題選択したが、ウェブサロン(井戸端サロン)らしく、話題は自由に広がりのあるものとなった。終了後は、毎回好評のオンライン飲み会を実施し、2230分まで話が尽きないものとなった。

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2020.8.1会報No.93

2ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第2ICT海外情報ウェブサロンが2020721()20時~21時、ウェブ会議室において開催された。テーマは「農と食を考えてみたら」であり、大分県、京都府、奈良県などからの参加や女性の参加もあって、前回に続きダイバーシティあふれるものであった。終了後は、オンライン飲み会を実施し、2230分まで話が尽きないものとなった。

 まず、参加者が簡単に自己紹介したが、懐かしい人達との再会に心が躍るようだった。次に、当会の倉島幹事からご自身の農作業の経験談、日本の農と食の問題、世界の動向などかなり詳細に説明し、ウェブサロンでの議論に向けて問題提起した。議論の時間が足りないほど、多彩で活発な議論が行われた。

 

 倉島幹事のプレゼンから、いくつかの話題を以下に示す。

・はぜかけ米を作っていたが、籾で保管するので、コンバインハーベスター米より味が長持ちする。

・果物栽培は摘果と剪定が肝心である。

・地面をアルミ箔で覆い、太陽光を反射させると、リンゴの色が良くなる。

・黒豆の畑の上に糸を張って、鳥による作物被害を防いでいる。

・人参などの野菜を地中に埋め、藁で覆って春まで保管している。

・農業の基本は土壌にある。土、水、隙間のバランスが大切である。堆肥は必要であり、作条施肥によっている。

・日本は食糧自給率39%、食糧輸入量世界一の一方で、大量の食品ロスがある。

・農水省は、食糧輸入なしの時の食事の例(1日あたり2020kcal)を示しているが、国民の理解が必要だ。

・外国の農地を取得する国があるが、日本はその動きはしていない。

・穀物流通において、カーギル()は世界シェアで4割を有している。農薬流通においては、バイエル()がシェア22%でトップであるが、中国資本傘下のシンジュンタ(スイス)17%とアダマ6%を合計すると、中国が世界一のシェアとなる。

・農業ICTとしては、LPWAによるセンサー活用、植物工場、クラウド等、進展しつつある。

・世界の人口が増大する21世紀末には、食料が逼迫し、現在食料輸出最大のアメリカもその余裕がなくなる可能性がある。日本の食糧確保の問題が予想される。

・人工食用肉(大豆)や人工葉緑素(光合成)などの研究も進められている。

・農業はいろいろな問題を抱えている。例えば、在庫が出来ない、農家の価格決定権がない、病害虫による全滅のリスクがある、雑草との闘いだ、石油がないと機械が動かず農作業が出来ない、人手が全く足りず外国人に頼るしかない、などがある。

 

 参加者からは、農業政策の問題はなかったか、減反政策が食糧自給率低下を招いたのではないか、農業のビジネス化が進まないのはなぜか、農業機械の導入状況はどうか、国の農業補助金制度は適切か、など活発な質問・意見が提起された。また、外出自粛の中、気分転換といくつかのヒントが得られたとの声もあり、今後ともウェブサロン継続開催や日程・時間設定へのご提案など、次回開催に強い期待が寄せられた。次回開催については別途ご案内いたしますので、多数の方々のご参加をいただければ幸いです。

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2020.6.1会報No.92

1回ICT海外情報ウェブサロン模様

 

 第1回ICT海外情報ウェブサロンが202055()21時~22時、ウェブ会議室において開催された。テーマは「テレワークをしてみたら」であり、シンガポール、マレーシアからの参加や女性も参加し、ダイバーシティあふれるものであった。終了後は、オンライン飲み会を実施し、2330分まで話が尽きないものとなった。

 まず、初めてウェブ会議に参加する方に対して拍手・チャット等の基本機能を説明し、参加者全員が簡単に自己紹介した。次に、当会の松田幹事からテレワークの概要、実際、効果を説明し、テレワークの課題として、①セキュリティ対策、②サテライトオフィス勤務、在宅勤務での勤務管理、勤務評定、③生産性向上、④孤立性の回避などを挙げた。その上で、テレワークは今後定着するかという問題提起がなされ、多彩で活発な議論が行われた。

 参加者からは、外出自粛の中、気分転換といくつかのヒントが得られたとの声があり、今後のウェブサロン継続開催に期待が寄せられた。今後開催する際はご案内いたしますので、多数の方々のご参加をいただければ幸いです。

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2019.12.13会報No.89

42回海外情報談話会模様

 

 第42回海外情報談話会が20191211()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は高橋 謙三様(電気通信大学国際戦略室客員教授、マレーシア・マルチメディア大学兼任教授、元NTT通信網総合研究所)、演題は「大学における国際協力活動 (アジア・欧米・中南米)」であり、国際協力に関する大学の役割、文科省の方針、世界の人口と大学の国際化、電気通信大学(UEC)の具体例、さくらサイエンスプラン、留学生の状況など幅広く、かつ熱い思いが伝わる話であった。当会はいつでも質問できる雰囲気で実施しているが、今回初めて質問票を配布したところ、シャイな参加者が多かったのか、質問票も複数提出され、従来以上に活発な会となった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

 

・大学の国際協力としては、高度人材育成国際協業(短期派遣、短期受け入れ、長期留学)、共同研究開発、プロジェクト受託が中心である。

・文科省は国際協力のための基盤づくりとして、①国際援助機関で活躍する人を講師とした講演会(→学生の理解を深める)、②大学と国際援助機関の人物交流(→トップ間人脈形成)、③国際援助機関等からの国際協力に関する情報共有(→協力案件に関する学内リソースの整備)、などを進めている。

・少子高齢化に伴い、大学教育のグローバル化とインパクトファクターの高い研究が必要となっている。

・大学のグローバル化として、スーパーグローバル大学創成支援、大学の世界展開力強化事業、短期留学生交流支援、長期留学生支援などがある。

・大学の世界展開力強化事業は文科省主管、日本学術振興会(JSPS)主催で毎年公募しており、UECも東京外大、東京農工大と連携し、中南米等の大学との間で文理協働型人材育成を実施した。

・短期留学生交流支援にはトビタテ留学ジャパン、日本留学生支援機構(JASSO)協定派遣、JASSO協定受入がある。UECの大学推薦派遣先は米国、中国、タイ、マレーシア、シンガポール、メキシコ、ベルギーなどの各国に渡り、派遣期間は3ヶ月以内である。

・さくらサイエンスプランは、産学官の連携の下、科学技術振興機構(JST)事業として、アジアなどの若者を日本に招聘し、日本の科学技術を体験させる事業であり、2014年のスタートから5年間で約26,000人を招聘した。競争率が激しい中、UECはほぼ毎年、このプロジェクトを受託し、UECによる招聘者の数は増加傾向にある。

・さくらサイエンスプランには日本に関心の深い学生が参加し、帰国後、日本に好意的な活動をすることが多い。

UECでは、留学、国際インターンシップ、グローバル活動拠点、グローバル教育などを実施している。留学生は267名で、在籍学生総数4,831名の5.5%程度である。国別では中国が半数以上を占めている。

・米国のビザ取りには半年くらいかかるなどの苦労がある。

・各国の大学と互恵的な関係維持に努めている。

JICA専門家として派遣されたマレーシア・マルチメディア大学とは今も関係維持しており、ホームページにも掲載されている。

・マハティール首相が前回首相当時に、同首相に対して遠隔教育のプレゼンをした写真が残っているが、忘れがたい想い出である。

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2019.10.1会報No.88

41回海外情報談話会模様

 

 第41回海外情報談話会が2019927()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は三上 哲郎様(CASL代表、元NTTシンガポール社長)、演題は「まるドメ企業のグローバル化」であった。映画「終わった人」予告編から始まり、実績の数々を魅力的に(本音で)語り、人生100年時代に向けての成功の秘訣、さらには現在注力している古民家再生事業やCASL勉強会(毎月2)の紹介など、あっという間に2時間が過ぎた談話会であった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

 

・終わった人にならないためには、夢、仕事、趣味がなく、家に居場所がなくなることがないようにすることだ。

・父親の海外活動に影響され、小さい時から海外志向であった。

・何もないゼロから1にする事業開発に関心が強い。その際は、黒子に徹して、成果を自分のものにしないことに心掛けてきた。一方、営業は110にする活動であり、あまり関心が湧かない。

・人それぞれ個性があり、そのDNAに合わせた育成・成長が大切である。

・自己申告書でニューヨーク駐在を希望したところ、国際部の初代欧米担当(技術系)に指名された。

・プレゼンテーションでは数多く失敗もしたが、ある時からシンポジウム等の他の講師と比較し、プレゼン力評価で最高得点を得ることができるようになった。

・プロジェクトEという外国キャリア数社との合同プロジェクトは、毎月1回世界各地でグローバルニーズを収集するものであった。最終的に、ワンストップショッピングとデータセンタが必要であると提言した。

NTTアメリカでデータセンタ構築に取り組んだが、場所選定に腐心し、不動産屋と弁護士の確執(利益対立)、交渉の3原則(タフ、フェア、浪花節)を学ぶ一方、電話での脅迫やピストルでの監禁などもあり、よく生きて帰れたと思う。

・データセンタは当初、顧客が少なく、嘘つき呼ばわりされたが、1993年のテロ事件で販売増加(ただし、テロリストの一味と疑われた)、さらには9.11でリカバリーセンター機能を含め、収益源として堅固なものとなった。

1991年に帰国し、長距離事業本部(鉢山)の企画・人材育成担当となり、LAN技術者2,300名を2年間で育成したり、入社23年目のステップ研修で国際戦略を担当したりした。

GINSはアークスターの原型になったが、導入前は社内の反発が非常に強かった。

OSL (Open Systems Laboratory)(外国製品に対する)無料のテストベッド・ショールームであり、社内からは国賊呼ばわりされたが、大量受注することができた。

AAN (All Area Network)NTTクリアリングハウス・クリアコンファレンスにも携わった。後者はVoIPであり、当時タブーであったが、後押しもあり実現することができた。

Arcstar Global IP VPN (MPLS)構築に奔走し、トップセールスで相当の成果を得た。

・人生100年時代の成功の方程式は、Spiral-Up Method (SUM)でうなぎ登りに成長することである。気づき→閃き→伝えるのサイクルを繰り返して成長する。特に、閃きは(私の名前と同じく)「三上:馬上、枕上、厠上」や、ダイバーシティによる化学反応で生起しやすい。また、伝えるためには、プレゼンテーションに長ける必要がある。

・経営トップが英語ができないことが、失われた20(30)の原因である。

・最近、古民家再生事業をしており、伊豆の古民家を再生し、合宿など実施している。また、毎月2回、CASL勉強会を開催しており、ご関心がある方はご参加ください。

 https://www.casl.jp/ 

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2019.8.1会報No.87

40回海外情報談話会模様

 

 第40回海外情報談話会が2019724()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は大野 邦夫様(株式会社モナビITコンサルティング研究部門長、元ドコモ・システムズテクニカルセンター主席技師)、演題は「女性起業家による被災地復興への挑戦」であった。本題に入る前のご略歴説明の段階で、NTT社員としては奇異なご略歴に質問が相次ぎ、予定時間にハラハラしつつも活発で有意義な談話会となった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

NTT通信研究所でクロスバ交換機の接点消耗対策、DIPS端末、リスプマシンELIS開発、米国InterleafとのJV設立検討などを担当し、その後、ジャストシステムでxfy、職業能力開発総合大学校でジョブカードやエピソード履歴書などを提案した。職業大では、「高度技術者就業支援と技能伝承研究会」を立ち上げて、リタイア後のハイスキル人材の再雇用の可能性を議論検討した。

・米国InterleafとのJV設立はうまく進まなかったが、先方CEOとの関係強化のため、カウアイ島で魚釣りをし、S部長はキハダマグロを釣りあげた

・職業大から福島高専に転籍された西口先生が「被災地における中高年女性起業家の育成」というテーマで科研費を申請され、その手伝いをした。

・エピソード履歴書をさらに展開し、マトリックス履歴書を思いついた。マトリックス履歴書は、一般的な履歴書のように、記述される履歴・職歴を上から下へ記述するのではなく、表形式として左上から右下へ記述することにより、期間毎の業務内容の関連をマトリックス的に展開して記述し、相互に関係する内容を把握したり、新たに発見することが可能となるものである。

・被災地で起業した女性起業家として、フェアトレードのコーヒー豆をネットショップで販売するSさん(いわき市)、学習塾を起業したOさん(いわき市)、スペインタイルを制作・販売するAさん(女川町)について、マトリックス履歴書などを活用して紹介する。

・ハンガリーから来日した女性起業家もおり、福島の酒蔵を支援するKojimoriシステム(ワイアレスセンサーシステム)にも関わった。

・ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)が今後の社会的な事業のあり方の観点で被災地での起業を研究テーマとして取り上げている。女川にも訪問・調査しており、A さんの事業に対して、利益追求を超えた価値を評価するコメントを述べるとともに、今後のビジネス展開を提案している。従来の財務諸表に依存した市場分析、技術予測に基づく事業モデルとは異質の、長期的・社会貢献的な視点に立ちながら、地域コミュニティを重視しつつ東北地方、国内市場、グローバル市場へと拡大する事業提案を行っている。

AさんのHBS提案への反応は、「私どもはできることをできる範囲でする以外のことは考えていません。地域的な拡大やグローバル企業など、とても考えられません」とのことであり、地道に地域のニーズに応える企業が設立されて存続しても良いのではないかと思う。

・最近話題のSDGsを実現するためには、経営学の教科書に則って競合して勝者を目指すよりも、地域で地の塩のように生きるような、地道な企業を育成・存続させる努力も必要ではないかと、被災地の女性起業家から教えられた。

 

多数の参加者から、性差による起業の違い、講師のビジネスモデルなど、活発に意見提起され、予定時間を超過するほどであり、真に“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。

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39回海外情報談話会模様

 

 第39回海外情報談話会が2019522()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は栗崎 由子様(ヨーロッパ・ジャパン・ダイナミクス 代表)、演題は「小さな多文化共生大国スイスから 日本のこれからを考える」であった。固定観念を打破するためテーブルをランダムに配置し、多文化共生とは何か、スイスの多文化共生の根本思想は何か、日本の多文化共生社会はどうありたいかなど、テーブルごとの議論と発表を数回交えながら、幅広くかつ熱く話され、質疑応答も活発であった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

・スイスで就職したSITAは、世界の航空会社のホストコンピューター間を接続しており、国連加盟196カ国より多い230+の国・地域をカバーしている。

・世界各国と対応しながら、新聞にない出来事が世の中には多いことを知った。

・多文化共生とは、幕の内弁当のようなものだ。

・日本の大きさは、エストニアからスペインまでヨーロッパを縦断するほど大きいが、それほど日本が大きいことを知らない日本人が多い。

・スイスの人口は日本の6.7%、面積は10.1%であるが、一人あたりGDP227.1%である。

・スイスは1つの連邦と26の州で構成され、27の憲法がある。

・スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つある。パソコンのキーボードも各言語に対応できるよう、ダイバシティーを配慮している。

・行政機関の事務処理もダイバシティーを考慮し、かつ簡便化されている。国境通過は簡単にできる。

・スイスの人口の4分の1は外国人であり、その内訳は欧州出身者が81.5%を占めている。子どもの頃から外国出身者と過ごし、皆スイス人としてのクラスメートである。

・チューリッヒ工科大学やローザンヌ工科大学の外国人比率は博士課程7080%、修士課程4050%と非常に高い。このような多様性社会が、7年連続でイノベーション世界一になる源泉だろう。

・職場もダイバシティーそのものであり、英独仏語を話す人は珍しくない。個人の仕事の責任範囲が明確であり、自分の仕事が終了すると帰宅する。重国籍は合法である。

 

質疑応答として、スイスの医療システム、生産性、本人証明方法、就職など、多数の参加者から活発に提起され、テーブルごとのディスカッション及び発表とともに、真に“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。

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38回海外情報談話会模様

 

 第38回海外情報談話会が2019215()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は三宅 功様(NTTデータ先端技術株式会社 前社長・現相談役、元NTT情報流通基盤総合研究所所長)、演題は「世界におけるサイバー攻撃の動向」であった。インターネットの構造、サイバー攻撃者のネットワーク、模擬サイバー攻撃デモ、ダークネット/ダークWebの世界、米国・中国・ロシア・北朝鮮等の状況、Huawei問題、日本政府のサイバーセキュリティ戦略など、幅広くかつ熱く話され、質疑応答も活発であった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

・情報セキュリティとサイバーセキュリティは異なる。情報セキュリティは情報及び情報システムに対する機密性、完全性、及び可用性を守るために、許可されていないアクセス、利用、公開、途絶、改変、破壊を防止することである。一方、サイバーセキュリティはサイバー空間の利用にあたって、これをサイバー攻撃から保護あるいは防御する能力である。

・危ないと思ったメールなどはサンドボックスでチェックするという教育が必要である。

・インターネットの一般的な検索エンジンで見えるのは全体の1割程度である。会員サイト、企業サイト、ECサイトのほか、匿名性の高いダークネットなどがはるかに大きく占めている。

・闇サイトSilk Road事件、米国OPM情報漏洩、StuxnetDDoSボットネットのレンタルサービス、Sony Picture Entertainment事件、バングラデシュ中央銀行事件、日本年金機構情報流出事件などを紹介するが、中には数年間以上の調査の上で実施するものもある。

・米国の履歴書Standard Form 86は、バックグランドチェックのため、約200ページの記載が要求されている。

 

質疑応答として、サイバー攻撃とイノベーション、サイバー傭兵、サイバー攻撃者の育成方法、日本のサイバー防御レベル、兵器とサイバー攻撃、ホワイトハッカーコンテストなど、多数の参加者から活発に提起され、真に“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。

なお、講師のご厚意により、著書「CxO(経営層)のための情報セキュリティ」(書店では売り切れ)のご提供があり、先着順で配布された。また、後日、同書20冊を追加ご提供いただいたので、次回の海外情報談話会で希望者(先着順)に配布することとなった。

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37回海外情報談話会模様

 

 第37回海外情報談話会が201897()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は石原 直様(東京大学名誉教授、元NTT物性科学基礎研究所長、元NTT技術企画部長)、演題は「工学系高度人材育成の動向と海外との比較」であった。学術論文に見る研究力の低下、基礎研究者の減少と基礎研究費の低下により日本の基礎研究が危ない状況にあること、高度工学系人材としての博士人材の育成環境及び産業界での活躍の場が国際的に劣っていること、科学技術立国の復活に向けた施策など、幅広くかつ熱く話され、質疑応答も活発であった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

・一般社団法人八大学工学系連合会は、北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学で構成され、工学にかかる教育、学術研究及び社会貢献の推進などを行っている。現在、八大学工学系連合会の事務局長を務めている。

2004年の国立大学法人化以降、国際的な論文掲載数が諸外国に比べて劣り始めた。特に、工学系の低下が顕著である。

・基盤的資金(政府支出)が減少しているため、外部資金拡大に努めているが、米国、欧州の公的機関の研究開発費は伸びているのに対して、日本は停滞したままである。公的研究資金と論文数は正の相関関係にあるというデータがある。

・政府提供資金は公的機関52%、大学39%に支出されているが、支出目的の相違等から論文数は大学80(国公立60)、独立行政法人10%となっている。

・研究者数と論文数も正の相関関係があるというデータがある。

・任期付教員数が特に若手で増加しており、任期中の研究活動が短期指向になり、任期後の退任が多くなっている。

・研究時間が減少し、社会サービスが増加している。

・米国の研究室は研究員、大学院生を多数抱えており、若手による論文数が多い。

・日本の博士号取得者数はOECD加盟34カ国中、25(先進国ではほぼ最下位)である。理工系博士号取得者数は一般的に経済規模(GDP)を反映しているが、日本は伸びていない。オランダは国家として博士育成を推進し、2000年~2012年に博士論文数を80%増加させた。

・八大学の工学系学部・修士課程から博士課程への進学率は1割程度である。

・米国では、産業界で博士人材が高く評価され、平均年収も10年後以降、格段に差を広げるが、日本では博士人材の主要企業への技術系採用数2.9%、博士人材への優遇措置のない企業73.4%となっている。

・文科省は、博士人材育成のための教育プログラムとして21世紀COE、グローバルCOEを実施してきており、現在も博士課程教育リーディングプログラムに取り組んでいる。

・欧米の大学院は博士学位授与審査に外部委員を含めているが、日本の大学院では学内委員のみである。

・欧州は学費が安く、学費が高い国でも奨学金が充実している。米国の大学院生は給付型奨学金、リサーチアシスタント等により返済義務のない生活費相当分の支援を受けている。米国の大学院では学費全額免除者57.3(一部免除者79.0)であるが、日本は1.7(一部免除者34.9)である。

・八大学工学系連合会として、科学技術を基盤に産業を牽引する博士人材育成のため、①優秀な学生の博士課程進学を促進、②魅力あるリーダー育成プログラムの設計と実行、③産学共同研究の推進、④博士インターンシップの拡充、⑤学生への経済的支援の充実、⑥博士課程学生に明るいキャリアパスを確保、について提言した。

 

質疑応答として、論文内容(言語)、研究以外の作業、任期付教授(特に若手)、兼業、文科省の対応、メンター育成、インターン、グローバル人材育成、次世代リーダー育成、諸外国との人事交流、昔のNTT通信研究所の良さなど、多数の参加者から活発に提起され、真に“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。

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36回海外情報談話会模様

 

 第36回海外情報談話会が2018720()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は神永 晉様(SKグローバルアドバイザーズ株式会社代表取締役、住友精密工業株式会社元社長)、演題は「IoT世界におけるセンサの役割」であった。住友グループの歴史、住友精密工業全体の事業、航空機事業、MEMS事業、トリリオン・センサ、技術経営まで、幅広くかつ熱く話され、質疑応答も活発であった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

・航空機事業は第一次大戦の飛行船ツェッペリン号の破片分析からジュラルミンを製造したことが原点である。その後、プロペラ、前脚、主脚、燃料ヒーター等へ展開した。

MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)事業はIoTの要であり、LSIではない3次元機械構造物のデバイスとして、自動車、プリンター、スマホ等で多数使用される。

・トリリオン・センサは年間1兆個のセンサが医療、農業、社会インフラなどの分野で接続され、飢えの解消、ヘルスケアの享受、汚染の除去、クリーンエネルギの確立などを解決し、ほぼ20年後に到来するAbundance(潤沢な世界)を実現するものである。

・センサとネットワークにより、膨大な量の情報が得られ、情報の処理(ソフトウェア)、情報の構築(アプリケーション)で大きなビジネスチャンスが生じ、最終的にはセンサへの価値環流が期待される。優れた技術を有する中小企業への利益還流も図られる。

・技術開発と技術経営とは、技術の社会への実装、それによって技術が世界を変える、それは幸せで豊かな生活の実現、それがイノベーションであり、そのイノベーションを実践するのは人財であるということである。

 

質疑応答は予定時間を超えるほど活発に実施され、“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。

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35回海外情報談話会模様

 

 第35回海外情報談話会が2018523()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は土田英紀様(NTTベトナム顧問)、演題は「ベトナムの市場動向とNTTベトナムの活動について」であった。ベトナム国概要から、情報通信、社会インフラ、都市開発、ビジネスリスク、旅行・観光まで幅広く話され、質疑応答も活発であった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

・自動車、食品、衣料品、スポーツ用品、流通、医療、保険、警備、ICT、建設・不動産、大学、法律・会計事務所、政府関連等、積極的な企業訪問を実施した。

・日系企業の進出は伸びているが、都市と地方の格差は大きい。

・本年326日、NTTと公営デベロッパーBecamex IDC Corp.は覚書を締結し、スマートシティ計画に取り組むこととなった。

・大宮アルディージャと連携し、サッカー関係の社会貢献活動を実施している。

・通信キャリアとしては、VNPTVietelFPTMobifoneがあり、固定電話は普及率6.3%、590万加入で下降傾向、携帯電話は普及率130%、12千万加入で飽和状態である一方、ブロードバンドは普及率8.1%、760万加入で継続して上昇傾向である。

NTTはハノイ地域の固定電話24万回線のBCC1997年から2012年まで実施した。カバー面積はシンガポールと同程度であった。ホーチミンはフランステレコム、ハイフォンはKorea Telecomが同様にBCCにより固定電話事業を実施した。

・ベトナムは電力、ガス等インフラ整備に力を入れている。また、ハノイ近郊、ホーチミン近郊に工業団地、スマートシティなどの都市開発が活発である。

・ベトナムの腐敗認識度数は175か国中119位であり、十分留意する必要がある。

NTTベトナムのハノイ事務所、東京事務所とも本年移転している。

 

質疑応答は講演の途中でも活発に実施され、“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。ハノイとホーチミンの比較、日越大学、留学生・技能実習生、政府規制等、尽きないほどの質問・意見があり、講師から丁寧な回答があった。

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34回海外情報談話会模様

 

 第34回海外情報談話会が2018115()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は白石アレマン様(東京大学空間情報科学研究センター協力研究員、元JICAシニアボランティア)、演題は「マラケシュ大学(モロッコ)におけるICT国際協力活動」であった。

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

・モロッコ王国の概要について、気候、風土、歴史、産業、宗教、通信事情などのほか、交通手段など居住者視点での身近な話があった。

・世界遺産として、フェス旧市街など8箇所あり、基盤産業の農業に加え、観光業の発展を期している。

・再生可能エネルギーに積極的に取り組み、2020年に全発電量の42%、2030年に52%を占めることを目指している。

・シニアボランティアとして、20113月~20138月、20146月~20166月の2回にわたり、モロッコのマラケシュ応用化学大学に派遣された。

・同大学は毎年1万名以上の受験者から約80名が選抜されるエリート校であり、電子工学、情報工学、ネットワーク・通信工学、産業工学の各課程が設置され、30名の研究者が指導にあたっている。

・シニアボランティアの活動目標として、①通信工学部4年生及び5年生に対するICT技術(無線・伝送・網計画)の教育・研究指導及び学期プロジェクトの論文指導・審査、及び日本・モロッコ異文化交流イベントへの協力、②最新の科学技術を習得するための国際セミナー開催への協力、③日本の大学との学術パートナーシップ及び共同研究プロジェクト、同大学実験設備の改善プロジェクトの推進を設定し、所期の成果を得た。

 

質疑応答は講演の途中でも活発に実施され、“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。講師は、母語のスペイン語のほか、フランス語、英語、日本語、アラビア語など流暢に話されるとのことに驚き、再生エネルギーによる国土開発、モロッコの大学制度、就職状況など、尽きないほどの質問・意見があり、講師から丁寧な回答があった。

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33回海外情報談話会模様

 

 第33回海外情報談話会が20171127()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は持田侑宏様(バイエルン州駐日代表部顧問)、演題は「インダストリー4.0の動向とその背景」であった。テーマとして、次のような事項について説明された。

 

1.インダストリー4.0 の基本

2.ドイツ連邦議会選挙結果はインダストリー4.0に影響するか?

3.「たて社会」の壁を乗り越えることができるか?

4.中小企業の活性化政策「クラスター」と日本

5.中小企業に重点を置いたインダストリー4.0IoT)推進策

6.一層の国際化に向けて

 

以下にいくつかの話題を列挙する。

・インダストリー4.0では材料・部品から顧客までの企業の壁を超えた連携が鍵である。

・ドイツ政府,産業界,学界が一体となって進める国家プロジェクトであり、エネルギー転換と並ぶトップダウン政策のひとつである。世界標準を目指し、州・国でのクラスターによる中小企業の育成実績の上に立っている。

・連邦議会選挙で次期政権の連立交渉が難航しているが、インダストリー4.0への影響はあまりないだろうというのが一般の見方となっている。選挙結果の背景として、ドイツ国内の東西問題に加えて、南北問題があり、難民の教育訓練政策を強化している。

・ドイツは、米国式市場経済ではなく、Social Market Economyを根本理念としており、全国民の繁栄を目指している。

・インターネットにより、縦社会の壁が低くなっており、その壁をインダストリー4.0による中小企業との対等なパートナーシップ形成や国連のSDGsによるバリューチェーン最適化などで取り除こうとしている。

・日本とドイツの中小企業は、売上高及び会社数の国内比率は類似しているが、輸出総額における中小企業比率はドイツ31%、日本8%と大差がある(ドイツの中小企業は500人以下、日本は300人以下)

・産学官及び中小企業の連携を目指すクラスターによるイノベーション政策で組織の壁を超えようとしている。また、職業という語のドイツ語berufは神からの召命berufenから出来ており、英語のjobよりニュアンスが重く、どのような職業・職種も対等で壁は低い面がある。世界で活動する隠れたチャンピオンが多数存在する背景となっている。

・バイエルン州はかつて農業が中心であったが、大学・研究機関等の設置・強化、研究開発資金、研究開発連携ネットワーク、クラスター型挑戦メカニズム等により、ハイテク産業へ転換してきた。クラスター型挑戦メカニズムは、個々の研究開発プロジェクトではなく、クラスターマネジメントへ一括財政支援し、クラスターマネジメントが個々のプロジェクトの連携を考慮して分配する形態である。クラスター型挑戦の中間成果として、活動会合・イベント参加者は5,000社、28万人以上、プロジェクト実施は700件、4,000人、3.7億ユーロ、外部資金獲得は連邦政府から4,000万ユーロ、EUから1,400万ユーロ、さらには参画企業の意識高度化に伴い、自己資金負担率が35%以上に上昇した。クラスターでは協力パートナーが得やすいメリットもある。

・ドイツは地方自治体(16)の自立性が高く、国を横断する研究機関としてフラウンホーファー研究所59箇所、マックスプランク研究所78箇所、ヘルムホルツ研究所16箇所が地域イノベーションの推進役を担っている。

・インダストリー4.0は中小企業強化に注力しており、試作環境の提供等展開している。

・お客さまのサービスまで含めたスマートサービスワールドというコンセプトを推進しているが、日本のSociety 5.0の考え方に近いと思われる。

・ロボットで有名なKUKAは最近、中国企業に買収された。その他、中国企業のプレゼンスが非常に高くなっている。

・日独は世界のトップレベルの研究開発力を有し、相互に補完できる分野が多いので、連携は効果的である。バイエルン州駐日代表部は日独連携の窓口として25年間活動し、今後も相互の情報交換や交流を進める。

 

質疑応答は講演の途中でも活発に実施され、“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。インダストリー4.0のソフトウェアやセキュリティ面、グローバルな標準化、日本の参加意欲、労働組合、クラスターマネジメント、移民問題と宗教、汎EUでの展開等、尽きないほどの質問・意見があり、講師から丁寧な回答があった。

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32回海外情報談話会模様

 

 第32回海外情報談話会が2017928()15時~1720分、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb TV会議室において開催された。講師は笹原英司様 (NPOヘルスケアクラウド研究会理事、(一社)日本クラウドセキュリティアライアンス代表理事、在日米国商工会議所ヘルスケアIT小委員会委員長、医薬学博士)、演題は「ヘルスケアICTサービスの基礎と新興国市場への展開」であった。以下にいくつかの話題を列挙する。

 

・医療ICTは病院情報システム、臨床情報システム、電子カルテシステム、遠隔医療連携システム、モバイルヘルスへと成熟し、それに伴ってデータ構造・速度、処理形態(バッチ、リアルタイム)、通信インフラも変化してきたが、システム間の接続等が混在するなどの問題もある。

・医療分野のドローン利用は2010年ハイチ地震後の緊急支援活動が契機であり、ジョンホプキンス大学の血液検体輸送研究、インド公衆衛生大学(IIPH)ハイデラバード校の医薬品輸送実験、瀬戸内かもめプロジェクトの物流サービス(クラウド管理含む)などがあるが、日本国内の医療ドローン利用は各種法令で規制されており、注意が必要である。

・インドでは、医師が都市に8割、地方に2割いるが、患者は都市2割、地方8割となっており、遠隔医療が期待されている。

・ドローンを取り巻くセキュリティ、プライバシーとして、オープン・クローズ型、サイバー・フィジカル空間の特性に基づき、航空安全管理、重要インフラ(航空×医療)のサイバーセキュリティ管理が融合・バランスするよう留意する必要がある。

・電子制御系技術をベースとしたセーフティ対策の延長では情報通信系技術をベースとするセキュリティ、プライバシーの要求事項に対応できない。

・ドローンはIoTの一つであり、IoTセキュリティ及びビッグデータセキュリティから見たドローンの脆弱性への対策が必要である。このため、開発と運用が連携するDevOpsへの期待が高まっている。

・医療ICTにおけるIoT×ビッグデータは、新たなイノベーションを生み出す原動力となる反面、ITリスクも高まっていることを認識しなければならない。

 

質疑応答は講演の途中でも活発に実施され、“談話”会らしい双方向の刺激的なものとなった。セントルークス病院のようなシステム化、医療と経営の分離、ベンチャー経営による病院経営人財育成、システムベンダーにチーフメディカルオフィサー配置、電子母子手帳、電子お薬手帳、薬・医の囲い込み・縦割り、北欧の医療システム、病院内のソフトウェア、システム間の標準化・オープン化・相互接続性、日本企業の海外での活躍と広報不足、離島へのドローン適用、途上国における継続性の確保、必要資金のファンディングなど予定時間をかなり越えるほど活発な意見交換があり、講師からもヘルスケアICTに関するNTTグループへの強い期待があった。

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31回海外情報談話会模様

 

 第31回海外情報談話会が2017721()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb会議において開催された。講師はPLDTチーフオペレーティングアドバイザー・元NTTアメリカ社長の鈴木武人様、演題は「今も継続・拡大するフィリピンのSmartPLDTプロジェクト」であり、参加者は田嶋衆議院議員を始め、32(Web参加3名含む)であった。以下にいくつかの話題を列挙する。

 

・真藤総裁は1988年末までの在任中、何度も電電は早く海外に進出しなくてはならないと言われ、種々試みはしたものの、事業を国内に縛る法の改正が無くては不可能であった。

1990年代初め、自民党の故橋本龍太郎氏が幹事長当時、世界で進む通信の自由化と通信会社の買収劇を見て『NTTも国際通信市場へ進出すべき』と声を掛けたそうである。法改正の国会論議には実績が必要とされ、タイのTT&Tに続き、インドネシアでサリムグループと組んで同様のBOTを企画していた。ところが、サリム財閥の巨大化を恐れたインドネシア政府が難色を示して拒否、サリムから代替のプロジェクトとして、フィリピンで移動通信等の事業免許を得たばかりのSmart社を勧められ、出資・経営参加することとなった。このプロジェクトはBOTの様な最後までのストリーが無い、全くのベンチャへの初めての投資といえる。

・大阪APECでのラモス大統領のSmart固定通信網への初電話・開通式は、機材として輸送したものが届かず、何と社員の携行荷物及び書類として手配したもので確保しマニラ側は準備できたが、大統領の出身地や他州へのコールも受けるため、既に展開していた携帯の交換機に固定番号も相乗りさせて網展開を図り、アクセスには古典的WLLを多数準備して、大統領が電話をかけると思われる政府機関、州町政府、実家、主たる選挙母体等に設置して対処した。

・敷設工事は当初、マンホール等の地下設備も含め通常の工法で開始したが、上向き経済で局舎用地の入手に遅れがあり、到着した通信機材を活かすため、建物基礎工事と骨組みを完了した段階で、各階の床仕上げを先行、ビル全体をビニールシートで覆って、可搬型発電機を駐車施設に搬入し、電力と空調を稼動させて交換機や伝送装置を搬入した。ダム工事の建設現場にコンピュータを入れた様な様式であるが、XBではないので、機械部分はMTUに限られたから2重に機器を覆えば可能と判断した。他にも、流動する火山灰地盤の地域ではコンクリート柱を四方に打ち込み、灰の上にコンクリート製のフロート状の地盤を作り、その上にプレハブ局舎を乗せて、まるで船の様な交換局を作った事もあった。許可が出て居たにも関らず、住民の訴えで工事要員が警察に逮捕され拘置されてしまい、自らその引取りを行った事や、許可申請の手続きに遺漏があったとして止められた工事を再開するために、マニラ郊外の市長と直接交渉せざるを得ない事もあった。

Smartは移動通信の後発であり、しかもアナログだったので将来性は各方面から疑われていた。しかし、当初のGSMは技術が未熟で音質が悪く、また基地局の展開も不十分であったため瞬断が多く、数十kmという長距離をカバー出来たアナログ(大ゾーン)が案外好評で、これに先行的に長距離料金の廃止をした事、また当時は常識外であったプリペイドを積極的に展開した事で、ある程度の市場を確保出来た。

900 MHz帯には空きは無く、NOKIAが先行開発したデュアルバンド端末が提供されるタイミングに合わせて、一部端末の無料提供も行って、現行加入者の900 MHz帯アナログから一時的にGSM 1.8 GHz帯へ引越し、この完了を待って900 MHz帯アナログのGSMへの切替え、そして仕上げはデュアルバンドGSMの提供という綱渡りを実施した。NOKIAの全面的な協力で成し遂げられたが、フィンランド人の緻密で謙虚な進め方に感謝した。フィンランド人はハンガリー人とともにフン族を先祖とするとの仮説があり、見るからにアジア人の我々に近い感じがした。

Smartが順調に経営を拡大する中、同国におけるNTTの様な位置付けにあった最大の電話会社PLDTの放漫経営と、旧型CDMA(SMSが無かった)を展開して経営不振に陥ったPLDT子会社Piltelに関し、同国金融界だけでなく政界からも危機感が持たれ、経営陣の交代と資本注入が望まれる様になった。Smartにとっては6リンクの全国光ファイバー網や全国へのアクセスが魅力であった。

NTTにとって、PLDTは多くの海底ケーブルプロジェクトへ出資して来ており、NTT14%以上の株を持つ事によりアライアンスの関係と認められ、PLDTを通じて国際通信事業に必要な海底線容量を原価で取得する事が出来るという事が魅力であった。NTTは当初はIDCの買収で実施するつもりであったものがCWIDCを想定以上の高額で買われてしまった代替策になったと言える。

PLDT買収後には、償還期限が迫った20億ドルの債務の借換えが必要であり、Piltelを巡る日本商社を含む債権者との膝詰めの交渉があった。シーメンスから調達していた関係でKFW(ドイツ輸銀)に多額の債務が有ったが、KFWは借り換えに難色を示し、日本政府又はNTTの債務保証を求められ、JBICからの資金提供(100億円)で対応出来た。

PLDT買収後にはSmartで始めていた法人向けサービスを本格的に立ち上げ、これがNTTアークスターと連携して、NTTPLDT双方にメリットをもたらした。

・2004年1月、ホノルルでのPTCPacific Telecommunications Council)会合中、駐米比国大使から「貴殿に逮捕権付き召喚状(サフィーナ)が発行されたので、FBI捜査員が探している。至急、米国の領土から米国籍の船舶、飛行機を使わずに退避せよ」と言う電話があり、最少の手荷物でカナダに飛んだ怖い話もあった。

 

質疑応答では、PLDTの買収方法、NTTPLDTから現在得ている配当金(年間100数十億円)など、活発な意見交換があった。

 今回、Web会議システムによる遠隔参加は4回目となり、大阪市、奈良市、金沢市からの参加があったが、ほぼ問題がなく、定着しつつあると思われる。当会はICT業界の現役・経験者が中心であり、Web会議システムを身近に気軽に利用する雰囲気づくりに貢献し、さらなる地域拡大を図りたいと思っているので、各地の皆様の積極的なご参加を期待する。


30回海外情報談話会模様

 

 第30回海外情報談話会が2017630()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb会議において開催された。講師はNTT関係技術士の会の飯田敏幸代表幹事、本間勝幹事、倉島渡幹事、演題は「NTT関係技術士の会とその海外活動」であり、参加者は29(Web参加1名含む)であった。

 

 NTT関係技術士の会の概要、活動内容等について説明があった。以下にいくつかの話題を列挙する。

・技術士とは、国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者で、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威ある国家資格である。技術士は、公益確保と資質向上が責務になっている。

・技術士第一次試験の合格率は受験者の49%であり、比較的取り組みやすいが、第二次試験の合格率は受験者の14.6%である。

・国際的な技術士の称号として、APECエンジニア、IPEA国際エンジニアがある。

・技術士のメリットとして、建設業法の専任技術者や監理技術者として活動でき、同法が規定する経営事項審査の技術力で評価されるなどがある。

・博士号との趣旨の違いについて、学理を開発した学者には博士という称号が与えられる一方、技術を産業界に応用する能力を有すると認められた技術者には技術士という称号が与えられるものである(土光敏夫経団連第4代会長)

・企業、官公庁、大学などの技術士会が組織され、相互交流・拡大を図っている。

NTT関係技術士の会は現在、個人会員約400名、法人会員9社・団体が登録されている。個人会員になるには、技術士資格は不要であり、NTTグループ・OBであれば、次のホームページで申込めばほぼ登録され、各種活動への参加やメーリングリストによる情報収集等が可能となるので登録申込を検討してほしい。

http://www.nttpe.org 

・海外活動に関しては、NTT関係技術士の会の設立以後、中国、ベトナム、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、フィリピンの現地ICT動向調査を実施した。海外の技術士との交流等により、現地政府高官等と面談しやすい面がある。

・今年度は、1115日~20日にタイの現地調査を予定しているので、多数のご参加をお願いする。

 

質疑応答では、技術士の法制度的権利・効果、技術士第一次試験の免除範囲(指定された教育課程)、途上国の事業活動への参画・貢献状況など、活発な意見交換があった。


29回海外情報談話会模様

 

 第29回海外情報談話会が2017524()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb会議において開催された。講師は山口順也様(本年2月まで駐ブータンJICA専門家、NTT東日本国際室)、演題は「ブータンの一般事情とICT化動向」であり、参加者は26(Web参加4名含む)であった。

 

 ブータンにおけるJICA技術協力プロジェクト、ICT動向、一般事情について幅広く話された。数回にわたり計10年近くブータン駐在勤務されたことから、現地のブータンテレコム(BT)社員等との粘り強い協力・ご指導と多大なご苦労が滲み出るものであった。写真をふんだんに活用されたので、非常にわかりやすく身近に感じることができた。以下にいくつかの話題を列挙する。

JICA技術協力プロジェクト(2014年4月~2017年3月)の目標は、「BT技術者の光ファイバーNWの設計施工・保守運用に関する能力の向上」であり、①技術マニュアルが整備、②光ファイバー加入者網のO&M体制が確立、③トライアル工事の技術指導による2都市における光ファイバー加入者網の構築、について所期の成果を得た。

・他国の技術協力プロジェクトに比べて、工程管理、安全管理などについては日本人専門家が得意な技術移転と思う。また、日常的なカイゼン活動に積極的に取り組んだ。

・光ケーブル工事について地元テレビ局、新聞社による報道があった際、工事中にも関わらず、通話品質向上を期待した顧客からすぐに電話開通申込が舞い込むこともあった。

BT2014年度売上高約43億円であり、固定電話23千加入、携帯電話486千加入、インターネット27.6千加入である。3G/4G携帯電話は2013年、携帯電話による送金・支払は2014年、データセンタ及びクラウドサービスは2016年に開始されている。社員数は約650名である。

・ブータンは人口約75万人、北部は標高3,000メートル以上のツンドラ気候、中部は1,2003,000メートルのモンスーン気候、南部は1,200メートル未満の亜熱帯性気候である。南北に山脈があり、東西移動する場合は何回も山越えが必要である。しかし、山は神聖と考えており、トンネルはない。山岳道路はガードレールがない所が多く、谷底に落ちる交通事故が時々発生する。同乗予定であったBT車両が落下し、全員死亡したことがあった。冬場は凍結のため通行止めとなる。

・ブータンと言えば、GNH (Gross National Happiness)を思い浮かべる人が多いと思う。GNHは健康、文化、コミュニティ、自分の時間の使い方など、9分野33指標で数値化されている。例えば、心理的な幸せ(生活の満足度、様々な出来事に対してポジチィブかネガティブか)、24時間の使い方(1日1,440分をどう使っているか。仕事・睡眠・社会との交流等のバランス)、コミュニティの活力(災害などの危機や不幸事、高齢化に伴う問題が起きた時に頼りになる人が何人いるか)などである。政府の聞き取り調査では、90%以上の国民が幸せと回答しているが、国連の国民幸せ度2016年調査では世界第97位であった。

・ブータンには光と影がある。光の部分としては、豊かな人間性(思いやり、穏やかな性格、忍耐強い)、ブータン人の高いポテンシャル(高い識字率、英語力、バランスのとれた外交調整)、自然環境の保全(伐採の規制、植林の推進等)、多数の水力発電プロジェクトを推進中(インドへの売電収入→国民所得の向上)、海外へ人材派遣(中近東へホテル・観光会社の従業員、本年4月から日本へ外国人介護実習生)などである。一方、影の部分としては、窃盗、ドラッグ、物乞い、自殺、鬱、農村部での人手不足・高齢化、都市部への若者移住(しかし、就職難→失業増加)などが起きている。バランスが狂ってきている感じである。

・インドとの貿易が最大である。以前は、インドとの国境は自由に行き来できたが、最近は国境フェンスが設置されている。また、中国との国境は2006年にブータン側の国土が縮小する形で変更された。

・都市化が急速に進み、伝統的な木造建築物がコンクリート建築物に変わっている。高級ホテルも多数開業した。

・民族衣装(ゴ・キラ)は政府機関への入出や公式行事のみ着用し、普段はユニクロなどのカジュアルな洋服が大半になった。

・松茸が安く、1キロ1,0002,000円くらいである。唐辛子は大量に生産・消費される。気圧が低いので袋入り食品がパンパンに膨れる。

・アーチェリーが盛んであり、いつかオリンピックでメダルを取れるかもしれない。夜間照明付きのサッカー場もあり、FIFAアジア大会が行われた。

・ブータンの良さがまだ残っているので、早めのブータン旅行をお勧めする。往復航空賃を含めて1週間3040万円程度で楽しめる。

 

質疑応答では、近代化・交通渋滞、インドへの売電、ホワイトカラーを好むこと(ブルーカラーはインド人、バングラ人)、インド・中国とうまく付き合うこと、日本との長い友好の歴史と強い信頼などについて、活発な意見交換があった。

 今回、Web会議システムによる遠隔参加は2回目となり、札幌市、四日市市、金沢市、奈良市からの参加があった。開始直後は少しモタついたが、パワーポイント資料の共有閲覧も問題なく進めることができた。地方創生の一歩と言うほどではないが、全国あるいは世界との相互交流・ビジネス展開の一助になればと思う。


28回海外情報談話会模様

 

 第28回海外情報談話会が2017419()15時~17時、(一財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)及びWeb会議において開催された。講師は橋本了様(NTTインターナショナル社長、元スリランカ・テレコム社長)、演題は「NTTにおける海外活動の変遷」であり、参加者はJTEC会場29名、Web参加4(4か所)であった。

 

 ODA、専門家派遣、技術協力プロジェクト、社内人財育成から、国際調達、電電公社民営化前後、その後の活発な海外事業展開まで幅広く話された。時々、あまり知られていない逸話・内輪話の紹介もあり、ご経験の豊富さと実話の迫力が感じられた。以下にいくつかの話題を列挙する。

・クウェートプロジェクトの人財はグローバルの洗礼を受けた第一陣であった。人材確保するため、人事の自己申告書に海外希望の項を新しく追加したところ、若い人はかなり◯を付けて提出していた。

・国際調達室の頃は日米貿易摩擦問題もあり、米国製プッシュホン(英語文字盤)の購入、ノーザンテレコムのDMS10400500台導入した。

・ロンドン駐在事務所時代は各国通信キャリアの全盛時代であったと思う。キャリア間の競争も熾烈なものがあり、真藤社長がロンドンに来てグローバル化の構想を述べた。

・ロンドン事務所からそのままジュネーブのITU-Tで電気通信開発センターに勤務することとなり、2年間で20プロジェクトを担当した。

1990年初頭から海外投資時代になった。このままではアジアの通信事業は欧米キャリア勢にとられてしまう危機感があり、日本政府は国際事業をNTT事業の付帯事業とすることとした。

・中南米の電話会社との提携等は事前に情報が漏れてうまくいかなかった。しかし、その後、浅田国際部長が強力に牽引し、タイ、インドネシア、ベトナム、スリランカ、フィリピン (スマート)、シンガポール (スターハブ)などに投資した。タイは当初100万回線、その後、増設50万回線の建設・運営であり、大プロジェクトであった。最終的には、TT&T、スリランカ・テレコムは株式売却したが、ベトナムは大幅黒字となり、スマートは現在も高いリターンを上げている。

NTTインターナショナルは当初大変だったが、すぐに優良企業となり、その後、NTTコムに吸収された。中国進出にあたっては厄介な話もあった。

・浅田さんは年間260日海外出張したが、田上さんは280日海外出張したとのことだ。

 

質疑応答では、スリランカ・テレコムの株式売却経緯、フィリピン(スマート)の事業展開、各国インフラ事業への対応、海外人財育成のあり方など、活発な意見交換があった。

 今回は、談話会として初めてWeb会議による全国展開を試みた。最初、事務局の不手際で音声片通話となったが、再起動後、クリアな映像と音声が確保され、遠方ではなく、あたかも隣室にいる感覚で進行できたと思われる。いつか海外とも接続し、「海外情報」談話会で海外との生の情報を受発信したいと考えている。今後とも皆様の海外情報談話会へのご参加をお待ちしている。